名古屋公演も終わりまして、今週は東京の定期公演です。
父、遠藤六郎が「菊慈童きくじどう」を勤めさせていただきます。
この曲は、初級三冊本にも出てくる、能としては短い演目です。
現代の演出では1幕物で、45分かかるかどうかの作品です。

舞台は中国の「れっけん山」という未踏の地。
その山の麓から霊泉が涌き出でたので、魏の王に使わされた探索隊が、その源のを求めて訪ねて行くのです。
その未踏の山奥に、なんと不思議なる菊の花園があり、そこには命が芽吹き花々が生い茂っていたのでした。そして、そこには700年間、童の姿のまま精霊の如く仙人となった慈童が一人暮らしていたのでした。

今回は、芸歴70年を超える父が、700年生きた童子を演じるというのが、まあ、見どころになりましょうか。
なんでもこの曲は、父の父、すなわち私の祖父の久六郎知久が、最後に舞った曲だそうで、その祖父の享年を超えた父が、一つのけじめとして舞うそうです。
真意は定かではないですが、追悼の思いがあるのかと思います。

短い能ながら、華やかな生命力に満ち溢れ、その命が伝えられて行く珠玉の作品だと思います。
よろしければ是非、お出まし下さい。

チケットのお問合せは、観世九皐会事務所へ。
番組