さて全国20地域で繰り広げられてます能楽キャラバン公演のひとつ矢来能楽堂師走能まで、ひと月と迫りました。
番組
解説 観世喜正
仕舞 淡路 駒瀬直也 当麻 観世喜之
狂言 呼声 シテ 大蔵彌太郎
能 海士懐中之舞 シテ遠藤喜久 地頭観世喜正
初めての方、初心者の方にも能楽の魅力、迫力、伝統美、面白さ、日本の歴史、文化の豊かさと伝統芸の良さを感じていただける番組です。
東京神楽坂の国の登録文化財の矢来能楽堂の趣ある舞台。帰りには神楽坂散策をなんていうのも楽しいです。
チラシにも解説が書いてありますが、狂言はNHKのEテレにも取り上げた、主人と太郎冠者に次郎冠者も加わってのわかりやすく楽しい狂言。観ている皆さんもつい声を出したくなるかも知れません。
能のタイトルになってる海士アマは、海辺に住み、海に潜って漁をする人達の事で、この曲の主人公は女性の海女。
その海女が、1300年に実在した名門藤原家の御曹司
藤原房前の産みの母だという秘密。
なぜ身分違いの海女が、藤原房前の母になり得たのか。
四国讃岐国、志度寺に伝わる海女伝説の能です。その真実は如何に。
世阿弥以前の能楽草創期の作品と言われ、物語と共に日本の歴史や文化の匂いを感じさせてくれます。
物語の展開がわかりやすく、セリフや舞が多いので、初心者でも眠くならずに楽しめる、大変面白い能。
昔むかしの物語なのに、古臭さを感じさせないのもこの能の魅力。セリフが多いので、現代劇的に時系列に展開して行きます。
親子の情愛がテーマの一つになっていて、母が子供の為に命懸けで頑張るのは、昔も今も一緒だなと、共感出来るかと思います。
母の愛は海よりも深い。
この曲の稽古をすると、私も亡母を思い出します。
今回は私の個人主催公演ではないので、チケットのお問合せは矢来能楽堂へお願い申し上げます。
ご来場お待ちしております。
海士の副題についている懐中之舞とは、小書という演出名の事。
後半、いよいよ成仏に向かう母が、龍女となって現れますが、ふところに経巻を持っています。
この経巻に書かれた霊験あらたかな経を胸に懐中して舞うので、懐中之舞と名付けられた演出。
通常は、息子である房前の大臣にすぐに経巻を渡してしまうのだけど、今回はより物語がわかりやすくなった演出かと思います。そこは見てのお楽しみ。
その他、この懐中之舞になると、橋掛まで舞台全体を使った替の舞の型の演出になるので、演技空間が広がってよりドラマチックになります。
矢来の舞台では、この演出で上演するのは何十年ぶりかも。
海士には、色々な小書演出があり、また上演時間も長くも出来るのですが、今回は長くならないようにスッキリまとめる予定になっています。
どうぞお楽しみに。