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この夏の制作。

能舞台の鏡板の松は、いろいろの決まりごとがあると言われています。
松の姿、葉の数、陰陽和合の幹の姿など私が知る限りでもいくつかあります。
しかし、日本中の鏡板の松は、ほとんどどれ一つとして同じものはありません。
これは、とっても不思議だなと思います。
しかし、年経た舞台の老松の姿はどれも素敵です。
これも能の魅力の一つと思います。

江戸時代の江戸城にあった能舞台の松が最も格式が高いと、うかがった事がありますが今は消失しています。また、その松に遠慮して、決まり事を少し外して描くものとも聞いたこともあります。
その昔、再建した矢来能楽堂の松を描いていただいた時、亡き父は絵師の手伝いをしたと言っておりました。もっと詳しく聞いておけばよかった。


そして、これが一番重要だと思いますが、鏡板というのは、神様と同じだということです。
歌舞伎他で使うのは、松羽目。
すなわち能舞台を模した松の羽目板という意味かと思いますが、能舞台は、鏡板といいます。
神社の神殿にある鏡と同じだということですね。
したがって、本来は鏡であり、その鏡に映った松だということです。
で、この松が影向の松。すなわち、神霊が松を依代にして降臨した松。
それを写しているということだと思います。
なので、画家が己の創作欲をもって書くものではなく、神社を建てるが如く神に畏敬をもって書かせていただくものだと聞いております。

ま、そんなことなわけで松一つとっても大変な事のわけですが、諸事情ありて劇場用に新しく松の絵を写した大きな布を制作することなりました。8月30日にお目見え予定です。
もとより能舞台の松には遠く及びませんが、ミューズの音楽ホールを少しでも能楽空間に近づけられたらと思います。
実際の能舞台の鏡板とホールの大きさが違う事もあり、よく云われる七五三の葉数とはせず、また現代の製作技術を使っての事ですが、気持ちとしてはそこに能楽の神様が降りて下さればと、そんな思いでいます。
この松の前で、能「橋弁慶」を上演します。
稽古も順調な子供ワークショップ出身の義経の好演を乞う御期待。

所沢ミューズ「触れてみよう能の世界 」予告編配信96秒です。
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はじめての人こそ是非お越しください。
詳しくはミューズまで。