能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

平家物語

御礼九皐会 碇潜予告解禁 YOUTUBE動画UP

一昨日、日曜日九皐会定例会にご来場ありがとうございました。
一部は兄、和久の頼政。
楽屋で舞台を見てましたら、亡父、六郎に少し似てきたなと思いました。
私は、顔も背格好も子供の頃から遺伝的に父にそっくりと、どこにいっても言われて育ったのですが、体格の良い兄は母似?と言われてました。歳をとると親に似てくると云いますけど不思議なものです。
「親父に似てきたね。歳取ったんじゃない?」
終演後声をかけると兄は微笑んでおりました。(笑)
今年は、6月25日に新潟りゆーとびあの公演を受け賜っておりまして、和久が碇潜舟出之習のシテを勤めます。船のイカリを担いで海に沈んだ平知盛が後半のハイライト。情報解禁になりましたのでご覧ください。
かっこいいチラシを作っていただいたのです。

https://www.ryutopia.or.jp/performance/event/28350/

そして予告編動画もYOUTUBUにUPされました。今年矢来能楽堂で撮影したものです。 YOUTUBE動画リンク

新潟も新幹線でも近くなりましたし、ドライブがてら行くのも楽しいですよ。是非お越しください。
私も頑張って仕舞と二位尼の二役をさせていただいております。この二位尼は昔、神遊で喜正師のシテの時にさせていただいおりまして、地謡が良くて、本当に海に飛び込むような気がしました。今回は、その喜正師匠が地頭をお勤めになります。その他、詳細はまた改めてブログにて。


一昨日九皐会二部は、春の仕舞3曲並びまして、桜尽し。私は小塩の仕舞を勤めました。桜に舞う在原業平。
どんな素敵なイケメンだったのでしょうか。業平さんは。遠く及ばずとも気持ちばかりは私も夢見て、桜の扇にて勤めました。


そして鈴木君の能、西行桜。
西行桜は、長ーいイメージあるのですけど、中入がない一場物なので、意外とスッキリしております。
静かな西行の桜の木の庭に、騒がしく花見の客(ワキツレ)が訪れます。賑やかな花見客と西行とのやりとりがあり、花見客が帰ったあとにようやく花の精霊が現れます。
面白い演出で、実は最初に舞台に出ているシテは、じっと20分以上、一声も発せず作り物の中の木の中にひっそりいるのです。まさに木の精。観客はシテの存在をすっかり忘れる程の時間の長さです。
そして、夜になり花の精霊が西行に言葉をかける。

忙しい現代人が忘れているゆったりした美しい時間かなと思いました。

一足早い花見の舞台となりました。

ご来場ありがとうございました。

おまけ。駒井カメラ速報 私の仕舞より。
IMG_4433


通盛を見る前に ちょっと長いけど日本史の勉強してください。

インフルエンザが流行っていますね。皆様は如何お過ごしでしょうか?
私は何とか今日までは風邪もひかず、通盛の申合せも終わりました。このまま無事に行けるといいのですね。

さて、通盛の物語の時代の歴史の流れがわかっていると、能もさらに楽しくなるので、一ノ谷の合戦の辺りまで、ひと通り世に知られたお話しをさせていただきます。

今回は当日プログラムの解説がないので事前に読んでいたただくといいと思います。
あらためて日本史勉強すると面白いですね。
丁度、NHKの大河ドラマが清盛のお話で、毎週楽しく見ております。まだドラマの方は保元の乱のずっと前ですね。能ではお馴染みの西行や、保元平治の乱で活躍する信西がドラマに絡んできて面白いです。この頃はまだ武士の身分が低く、清盛のお父さんが頑張っている時代です。

さて、それからポンと時間を進めます。公家同士の権力抗争に武士の源氏や平氏が巻き込まれてゆきます。しかし、武力による政治決着は武士の台頭を促します。そして保元の乱のあと信西の政治的思惑と絡み平家は源氏を凌ぐ恩賞を賜ります。
1160年の平治の乱で平家一門が台頭。謀反を起こした源義朝ほか一族は四散します。
この時、奇跡的に命を助けられた頼朝、義経が20年後の立役者となってゆきます。

1167年平清盛は、武士の出身の身でありながら太政大臣に就任し人臣を極めます。
それから10年間、平家一門の栄達は目ざましいものがありました。
しかし、打倒平家の芽は、宮中でも、また東国の武士の中でも少しずつ育ち始めていました。
娘を高倉天皇に嫁がせた清盛は、帝の寵愛を受けた「小督」を追い出してしまいます。能では、その小督に帝の使者が文を届けるというお話。
小督には娘さんがいたようですね。平家滅亡後、この娘さんは大変な位に上られますね。数奇な運命です。

ちょうど同じ頃、後白河法皇や俊寛といった反平家勢力は、打倒平家の密議を鹿ヶ谷で行います。
その謀議が発覚して「俊寛」は鬼界ヶ島に島流しになり、2年後には亡くなったといいます。
この頃、清盛の娘徳子(後の健礼門院)は、天皇の子を懐妊出産しています。清盛は天皇の外戚となって権力をさらに強めていきます。
この頃が清盛の絶頂期ではないでしょうか。

しかし、少しづつ平家の運気に陰りが見え始めます。
清盛の跡取りであった嫡男・平重盛が病気で倒れると後白河法皇は所領を没収し復権を狙います。
しかし、そうはさせじと福原(神戸)の清盛が軍勢を率いて上洛しクーデターを起こします(治承三年の政変)。
主だった公卿、院近臣を解任し(能「玄象」に出てくる藤原師長もその一人)、後白河法皇を幽閉し院政は停止。清盛の娘の生んだ子が「安徳天皇」となって即位すると事実上平家独裁政権となって六十六か国ある知行国の半分までが平家一門に独占されました。
宗盛が総帥となった栄耀栄華の頃がもしかして「熊野」との花見でしょうか。

1180年5月。後白河院第三皇子・以仁王が挙兵。
長らく平家政権にいた「鵺」退治で有名な「源頼政」も反旗を翻しますが、宇治平等院で討ち死。
似仁王の令旨を受けて同年8月には伊豆にいた源頼朝が挙兵。9月には幼少期に「実盛」に助けられていた木曽の源義仲が挙兵。10月に上洛を目指す頼朝軍と富士川で激突するも平家あっけなく敗戦。
興福寺・園城寺(三井寺)も反平家の動きに同調したため、園城寺・興福寺・東大寺を焼き討ち。
これにより平家は仏敵となりさらに追い込まれてゆきます。南都焼討の総大将は重衡。後に一ノ谷の戦いで捕虜になり、能「千手」では捕虜となった重衡と千手の短くも儚い交流が描かれています。

1181年2月。この激動の最中に清盛が病死。
1183年5月。勢いに乗る木曽義仲が倶利伽羅峠で平家軍、重盛嫡男・平維盛を撃破。
1183年6月。篠原の戦いに勝利。斎藤「実盛」は平家方として参戦。義仲軍に敗れ戦死。ここを最後の戦いと決め、老将と侮れれるのも口惜しく、若々しく戦って死にたいと髪を染めて出陣。首実験で染めた髪が洗われて白髪に変わって、まさしく実盛とわかると、かつての恩人の死に義仲は落涙したといいます。

1183年7月。ついに義仲都へ上洛。平家一門は安徳帝を伴い都落ち。以仁王の反乱からわずか3年。
20年に及ぶ平家の栄華がここに終わる。

京都を制圧した義仲であったが、都の治安を掌握出来ず都人に顰蹙をかう。
平家追討の隙をついて後白河法皇の手引きにより源頼朝軍が上洛して来る。慌てて都に戻り後白河法皇に抗議をするも頼朝軍は都へと迫る。
1183年11月。義仲は後白河法皇と決裂して軍事行動を起し法皇を幽閉。
1184年1月。木曽義仲は征夷大将軍になる。しかし、都に迫る頼朝の先発隊、源範頼・義経軍と開戦し、滋賀県大津(粟津)で「兼平」らと共に戦死。ここに木曽義仲の短い天下取りの夢は消える。
源平盛衰記では、「巴」が兼平の妹として登場する。能では女性が薙刀をふるって活躍する唯一の演目。

義仲に押され一度は九州まで落ちた平家だが、四国に上陸し屋島を拠点として勢力を回復し始める。源氏同士の抗争の間に盛り返した平家は福原(神戸)まで進出。後白河法皇は平家追討の宣旨を出し、ついに頼朝の源氏と平家の戦いの火ぶたが一の谷で切られる。

1184年2月。一ノ谷の戦い。義経の鵯越の作戦で平家敗走。「敦盛」「経正」「忠度」「知章」「通盛」ほか平家一門の多くが戦死。海に逃げた平家の戦いはさらに「藤戸合戦」「屋島」「壇ノ浦」と続いてゆく。
今回の2日間の公演では、仕舞の「藤戸」までが上演されます。

ついでですが今年の私の自主公演「遠藤喜久の会」ではこの「藤戸」を能で上演します。11月25日です。
能では習いの曲になっていて重い扱いです。藤戸の戦に巻き込まれた漁師の母と子の物語です。
是非見に来てくださいね。気が速いけどちょっと宣伝(笑)
藤戸仮チラシ表1BUROGU
さて、一気に書くと、もうずっと戦いが続いていますね。嫌ですね戦争は。
現代は税金が高くても戦争がないだけ日本はよくなっているのでしょうか。ま、だからといって税金が上がるのは賛成できませんが。そうならないでよくなる方法を考えるのが現代の政治家さんじゃないかと思うんですよね。
武力も財力も必要なのはわかりますけどね。大変なのもわかりますけどね。皆なだって大変なんです(笑)
権力を持つと人は変わってしまうんでしょうか?それじゃ800年前とあまり変わらないな。我々は。
あ、すみません。話それました^_^;

話もどして、こんな一門が滅んでゆく戦争の最中のお話が、平通盛と小宰相局の物語です。
何時別れが来るかもわからい大変な時だからこそ、人は大切な人を大事に思い一緒にいたいと強く思うのかもしれません。昨年の東日本大震災以来、そういう事を思う方が凄く増えているとニュースでやっていましたっけ。

一ノ谷の決戦前夜。通盛と小宰相は二人きりで別れを惜しみます。
戦争で皆が戦支度をしている時に、女子と別れを惜しむ事の是非はわかりませんが、ツッコミ所も沢山あるのですが、通盛さんの人間的な優しさと弱さにも共感が持てます。好きだな、こういう人。

結局この戦いで通盛さんは討ち死にし、小宰相さんも亡くなるわけで、この二人を能の中では鎮魂して成仏させています。
今回800年以上前の人を演じるのですが、人間はそんなに進化もしてないし、もしかしたら退化してるかもしれないんだけど、今を生きる自分の中で共感したり感じたりする事があります。能の演技は饒舌に多くを語ったり感情的になったりしないのですが、それだから伝える事が少ないのではなくて、それだから言葉にならない多くの思いを非言語コミュニケーションで伝えていると思います。実は、そういうコミュニケーションの情報量の方が、言葉よりずっと多いんだよね。我々は。わかる人には全部わかるというお話。


そんなわけで今回の舞台は、精一杯生きて精一杯死んで見事に成仏したいと思います。それに、誰かが何かを自分なりに感じていただけたらなあと思います。


では舞台でお目にかかりましょう。よろしくお願い致します。

告知 能楽ライブ

夜はなし写真館更新→ドアTOドアの間に
1月28日に横浜の港南区のホールで先輩の中所さんの能楽ライブで琵琶とのコラボがあります。
能といっても能楽公演ではなく、舞と謡と琵琶の3人だけのコラボですが、平家物語をテーマにしています。
サブタイトルが「滅びと弔い」です。
私は平家物語を題材にした謡曲を一人で謡いに行きます。
琵琶の荒井姿水さんの息子の靖水さんとはコラボレーションの企画能で共演いただいたことがありますが、私は姿水さんとは初めてです。それぞれ別の世界の芸能がどう混じり合うのか楽しみですが、ちょっと緊張します。お近くの方は是非お越し下さい。詳しくはこちらへ→ひまわりの郷

能の平家物語
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 琵琶法師の『平家物語』と能
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能で綴る平家物語 若竹能 チケット好評発売中

📷夜ばなし写真館更新12/6

観世九皐会若竹能3年ぶりの復活公演ということで
「能で綴る平家物語」と題した企画公演を行います。
来年平成24年 2月18日 2月19日 7月22日 
2月に行われる2日間の公演のチケットが先週末発売開始になりまして、気になって事務所に寄りましたら、まだ発売一週間ですが、19日公演は、残席が100を切ったようです。
とっても売れ行き好調なので、まだ来年だから年明けでいいわと思っていられる方は、どうぞお早めにご予約下さい。

追加公演は、能はあまりやらないので
まさに一期一会の一日限りのこれっきり。 潔いよいのです。

私は初日は地謡で出演。2日目は平家の公達「通盛 みちもり」の能のシテを勤めます。
是非観に来て下さい。
今回の公演の特色は、平家物語を題材にした能の演目を能と、仕舞で一挙に上演します。
2月公演では連日、能一番、仕舞7番。つまり夏公演を合わせ3日間で20曲以上の平家物語関連曲を上演する企画公演。九皐会若竹会総出演で頑張ります。
2月18日は、歌舞伎でも有名な俊寛の能。タイトルはその名も【俊寛】。もちろん能がさきですから、これが歌舞伎の元になっています。NHHアナウンサーとして活躍された葛西聖司さんの名解説付き。19日は、戦中の夫婦、通盛みちもり。朗読家 飯島晶子さんによる平家物語朗読付き。どちらも魅力的ですね。

また7月公演を入れた3日間、平家の台頭→流転→滅亡と時代を追っての3日間の公演になっています。
全部来るとさらに面白いですね。
(*チケットは、通し券はありません。各回独立してチケットを販売しています。)

詳しくは観世九皐会事務所のホームページをご覧ください。クリック!!
出演能楽師ほか、カンフェティでも取り扱いがあります。よい席はどうぞお早めに。

よろしくお願いします!!

さて私は年末公演、今年のフィナーレが見えて来ました。ゴールはもう間近。
さあいよいよ通盛だ!
今年も皆様本当にありがとうございました!!!!!! ってまだ気が早いか(笑)
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プロフィール

nohgakuhanabutai

観世流能楽師(能楽のシテ方 演者) 日本能楽会会員(重要無形文化財 能楽(総合認定)保持者 幼少より子方を勤め、東京神楽坂の矢来能楽堂で修行し2千以上の能楽公演・講座・コラボ舞台に出演・制作。毎月、矢来能楽堂定期公演に出演。 能楽重習曲、乱・石橋・道成寺・望月・安宅・砧・翁など披瀝。 また東京中野区・練馬区・所沢市・秋田県を中心に稽古と普及活動をしている。(公社)観世九皐会 能楽協会所属 日大芸術学部卒業 
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