昨日は定期公演の申し合わせ。リハーサルでして、若い人達に手伝って菊慈童の作り物に菊を仕立てておりました。能の舞台道具は、リアルな物ではなくて、可能な限り簡潔で簡素であります。菊のまがきをしつらえた藁家や台。
不思議な生命力を湛えた枕や慈童の住む園を、実に簡素な舞台道具で表現します。菊は本物を使う事もありますが、総じて生花でないものを使う事が多いです。こうした舞台道具は、直前に仕立て、終わるとすぐに壊してしまいます。
勿体無いようでもありますが、出来たてをお出しするのが、食の常識であります。どこか能にも通じたところがあります。何年と使っている道具でありますので、真新しくいわけではないのですが、一枚一枚葉を拭いてゆきますと、微かに息づいて参ります。一つ一つをリアルに、あらわにしすぎないことによって、全体との調和がとれることもあるのです。

作りながら松園展の話題になり、はや行った人もいて、それぞれの好みの作品があって楽しい。結局その日も、帰りにもう一度寄り道して観て参りました。絵の中の娘達に会いたかったということもありますが、さらに感じる所があり、凄いものだなと関心しきりでありました。
「青眉抄」という画伯の随筆集を買い求めましたが、作品への心情が書かれていて面白いのです。あの「序の舞」につても書かれておりました。(なるほど。それであの場面のあの姿なのか。そこを絵に切り取る感覚が凄い。ふむふむ。と自問自答の自己満足であります・笑)

11月3日の講座への申込がボツボツ来ておりますが、機会があれば、是非上村松園展を見てから参加されると更に興味が広がると思います。私もよいタイミングで行けまして。幸運でした。明日は父の舞台です。なんだか祖父に似てきました(笑)。