能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

盛久 もりひさ

現実逃避の力

事務仕事が山積みになったり、本番が近づいて緊張して来ると、私の場合、決まって小道具をいじり出す。
舞台に使う物を作ってみたり、修理を始めるのだ。

そのお陰で極く稀に傑作が生まれる時もある。
先日アップした数珠は、もともと漂白された白房だったが、それを生成りの白と浅黄に染めた。

しかし、稽古をしながら姿見を見ると何となくしっくり来ない。
少し優しい色なのだ。

盛久ならば茶か紺か、はたまた紫か?
盛久の信仰心と覚悟と立場をそこに少し出せないものか。

しかしこの先の他の曲で使うこともあるし、当日の装束との取り合わせもあるので、どうしたものかと思っていたが、やはりもう少し濃い色が盛久には良いだろうと、現実逃避の始まりで色染めに再トライ。

自分の持物なので、こだわり出すと結構しつこい。
ちなみに正絹の房は、水につけてはいけないと房を買った時の注意書きが入っていたので、真似しないでね。

さて一発勝負。。
おお。なんかいい色に染まってしまった。。


気を良くして、稽古に使っいた派手な欝金地の経巻の裏地緞子もバラして染める。
おお。
これ本番用に行けるのかも。
経巻は本来紙巻だから、掛け軸のように裏地は地味な物なのだが、この曲の舞台用となると経巻を読む場面が見せ場となる。自然観客はその裏地を眺めることになる。そういうものだといわれればそれまでだが、霊験あらたかな観音経が何より大事なので、その経巻にも、もう一工夫あっても良いのではと思っていた。

数珠も、盛久の信仰心を象徴する持ち物で、装束念珠という、古い様式のものを、舞台用に待ち手を使い易くして使っている。これも演者により様々だ。

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というわけで、今回は染色マスターに。

もとの黄色の緞子に紺を掛け合わせるとご覧の通り織部色に。それに細工して総裏の巻物の完成。
これに金泥で観音経を書きつければ、まさに本物の観音経経巻なわけだが、それは実際には書かない。
能に使う、文や書は基本無地のものを使う。
なので私だけが読めるように心に念写する。
稽古用にしては上手く出来たので、本番でも使うかもしれない。

それにしても、この現実逃避の集中力をもっと社会の為に役立てれば、少しは人様のお役に立てるのではないと思う時がある。が、なかなかそう都合よく発動しない。

まだ本番まで日があるので、結局どんな小道具や、装束を使うことになるのか。それも楽しみ。乞うご期待。

さあ道草し過ぎた。稽古稽古。汗。

このところ何処に行っても風邪とウイルスの猛威が気になるこの頃です。
病院に行くのさえ心配なこの頃。
咳一つで人が振り向くので、空咳も出来ない。

観世音菩薩様の念波観音力で、ウイルス退散を願うばかり。

観音様のお力を書き示したこの経文。

観世音菩薩普門品第二十五

是非ネットで翻訳をご検索下さい。
頼もしいですよ。
またYouTubeには、実際にお坊様が読経していたり、音楽になっていたり、身近に親しめる時代になりました。
ご参考までに。

三月のこの公演。まだチケットあるようです。
是非矢来能楽堂へお越し下さい。
この曲、能面をかけずに素顔で演じるので、それも一つの見どころかも。ちょっと現代劇のような感じに物語が進行します。

詳しくは観世九皐会ホームページへ。→九皐会


盛久 念珠

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さて三月の定期公演での盛久に向けて、少しづつ緊張感が出て来ました。
頼んであった新しい数珠が出来上がって来たので、それに少し手を加えました。
まあ、本来数珠の玉数は、108とか、色々細かく決まっているわけですが、これは舞台用に多少略式にして色々使い易くしてあります。
玉を大きくすると108個では、二連にして持つ能の持ち方では、大きすぎるのですね。かと言って小さい玉だと女性的な感じになりますし、今回は少し大きめな玉で作りました。
房の色は、こちらの要望の色がなかなか手に入らないので生成りの白と、薄緑に染めました。
もう少し薄く染めたかったのだけど、発色が良すぎました。ま、房だけ変えることは出来るので、使ってみて様子を見ます、

結構演者の皆さんは、数珠持ちが多くて、マイ数珠を持ってる人多いです。
数珠マニア?
気にする人は、こういう仏具は色々あるので、稽古もあるし自分のがいいわけです。
うちにも祖父や父の使ったものや、私の作ったものなど、いくつかありますが、今回の少し大きい仕立てのは初めて。
今年は、10月公演の自然居士でも使えそう。
やはり本水晶と翡翠を使って職人さんが作ってますから、舞台用とはいえ全く本物であります。
これで観音経を唱えれば無敵。

というわけで、是非三月九皐会に実物をご覧にお出まし下さい。

何といっても、師匠喜之先生の吉野天人揃いがメインイベントにありますので、華やかな舞台をお楽しみいただけると思います。

チケット発売中です。詳しくは観世九皐会ホームページへ。



平盛久 タイラのモリヒサ ゆかりの地

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今朝は、三月の九皐会定期公演でシテの盛久を勤めますので、盛久ゆかりの観音様をお参りに上野寛永寺清水観音堂に参詣。

盛久の絶対絶命の危機をお救いなった霊験あらたかな観音様です。

今日は縁日という事でお坊様の読経と講話があるというので伺うと、10人以上のお坊様によるありがたい大般若経転読と観音経の読経がありました。
檀家さんと思われる一般の方も50人以上お集まりで、一緒に観音経を読むのよ、と教えて下さり、私も観音経を一部求めてご一緒に席に着きました。

能 盛久でも観音経の経巻を開き読む場面が出てきますが、これは謡いになっており、節付けもされております。
しかし本日の実際のお経は、凄く早くて、初めて謡本を読むようなもので、周りの方にとてもついていけませんでした。
これは日々声を出して読経していないとなかなか勤まらないと思います。
皆様の信仰の篤さに感動しました。

また、観音経が終わりに近づくと、なんとも言えない高揚感があり、ありがたい気持ちになりました。


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盛久は、日々この経を読誦していたと言います。
そして、壇ノ浦で平家が敗戦したあと、都に潜伏し観音像を清水寺に奉納。やがて捕らえられて鎌倉に送られます。

そして由比ヶ浜で死罪となるその時、観音経を唱えて最後を迎えました。
執行人が盛久を斬首しようと振り下ろした時、突然刀は粉々に砕け、刑は取りやめになったといいます。

後日赦免となった盛久が清水寺に参ると、不思議な事に盛久の刑の時刻に観音像が倒れて破損したとの事。
まさに盛久の身代わりになったのでした。

その観音像が巡り巡って、今上野清水寺の秘仏になっており、年に一度公開されるとのことでした。
(今日はその日でありませんでした。)

観音経の後半は、とにかく心強く衆生を救ってくださる言葉が書き連ねてありまして、読んでいるだけでも力強く救われる気持ちになります。
是非皆様も機会がありましたらご一読下さいませ。
今日は、ここで私は合掌して失礼しました。

その後、お坊様に教えていただいた上野大仏に立ち寄り、お弟子さんのお子さんの受験祈願をして帰りました。
なんでも落ちない大仏様だそうで、お参りしていくと良いですよとお勧めでした。
受験生お持ちの方は、お参りされると良いかもしれませんね。合格されますように。
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すっかり体が冷えたので、神田駅でお蕎麦食べて帰還でした。
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蕎麦は神田に限るね。美味い!




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