能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

御礼 九皐会 初会 翁 

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昨日は、観世九皐会一月新春の定例公演にご来場賜りまして誠に有難うございました。

お陰様で、翁の大役を無事に勤めさせていただきました。誠にありがとうございました。

能の世界では大変に大事にしている演目で、遡れば室町時代の能楽大成の遥か以前より伝承された神事の演曲です。
観世流では重習奥伝という最高位に位置する演目となっており、まさにその名の通り秘事口伝伝承で伝えられてきた特別な演目。
本来、一門の当主、長老が演じる別格の演目なのですが、観世九皐会矢来能楽堂の定例公演では、矢来能楽堂で観世喜之師匠の元に住込み内弟子修業してきた者が、生涯一度の大役として翁の披き(初演)のお役目をいただき勤めを果たすのが今までの慣例となって続いて来ておりました。
私の場合は、翁の千歳の初役を師匠にいただいてから、実に30年目。平成と共に過ごした舞台人生の節目となる今年でした。

そうしたことで九皐会の一年の最初を飾る神聖な舞台を仰せつかり、まさに一世一代生涯一度の覚悟で臨んだ舞台でした。

年明けの新春の定期公演という事で、半年間リザーブ席のお客様も多く、チケットは昨年発売初日に完売しました。
あまり宣伝する間も無く席が埋まり、また曲が曲だけにブログなどで多くを語ることも出来ず終いでしたが、ご覧いただきました皆様、応援してくださった皆様に、厚く厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

兄が一昨年に披いた時に心の準備はしておりましたが、昨年秋頃より本格的に師匠に稽古をつけていただき、お囃子方と下稽古をさせていただいたりしながら準備を進めて、暮れ頃から色々な方にお声がけいただき、またお気遣いいただいたり、ご指導を賜ったりしながら、徐々に皆様の祈りが私に集まってくるのを凄く感じておりました。

他の演目では感じたことのない、私事ではない曲の重みというのでしょうか。
物語の一役を演じるということとは違う曲の大きさと、事の重大さをヒシヒシと感じておりました。
この曲は、本人私のものにあらず公のものであるという思いを新たにしました。

とにかくも皆様の思いや祈りを、私の失態で無駄にせぬようにと思いながら稽古を重ねておりました。

前日、大粒の雪が舞い落ちて来た時には、私の慣れぬ潔斎に雪でも降ったかと、ひやりとしましたが当日は皆様の祈りが天に通じたか如く天気も収まり降水確率0%には驚きました。
滞りなく無事に済みましたのは、一重に皆様のおかげ、天の加護と、心より感謝申し上げる次第です。

ともかくも無事に済み安堵いたしました。
まさに心は万歳楽です。

昨日のシテ方の布陣は、ずっと稽古をつけてくださった師匠観世喜之先生が主後見にお座りになり、兄が副後見で面倒をみてくれまして、大先輩長山禮三郎さんが地頭、喜正若師匠が副地頭となり、楽屋内では、諸先輩にご指導いただき、後輩方にも細々とお気遣いいただき本当心強く、一門の皆様に大変お世話になりました。これもまた大変有難いことでした。
そして翁に集中出来るように年明けから稽古を控えくれた私の社中の方々にも感謝したいと思います。

ブログ上ではありますが、お客様関係者の皆様への感謝を書き記しておきたいと思います。
誠にありがとうございました。


早速に駒井カメラマンから映像が来ましたので、まずはワンカットご披露させていただきます。

追伸
渡辺カメラマンの写真もトリミングして載せますね。
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ありがとうございました。










能楽師走る 平成三十年の九皐会納会 そして翁へ

早いもので今年の毎月の九皐会定例会も本日無事終了いたしました。
一年間、ご来場賜りました皆様、誠にありがとうこざいました。
今日は人数物の七騎落という曲で、喜之先生と喜正師、和歌さんの三代共演で、楽屋も賑やかでした。もう一番は健之介君の九皐会での初シテでした。
また将来能楽師を目指す若い子達も楽屋に働きに入るようななりまして、皆揉まれながら自然となじんで行くのだなと、自分の若い頃を思い出しました、

矢来能楽堂は、裏の楽屋の改修工事が明日から始まり、子供の頃から出入りし、内弟子で住み込んだ楽屋とも今日でお別れでした。
意外と感傷はなくて、次の未来が楽しみな自分でした。

納会が済みますと年内もカウントダウンに入りますが、今年はまだ学校公演が残っており、あちこちと飛び回ります。私はあと二番ほどシテを勤める予定です。最後まで頑張って行きたいと思います。


さて来年平成31年の九皐会定例の一月公演では、早いもので、いよいよ翁の太夫を勤めさせていただきます。

丁度30年前の昭和最後の正月。即ち平成元年正月の定例会は、昭和天皇御崩御の弔意を表し神歌法会の式となり、その千歳を勤めまして、翌平成二年の正月に師匠 観世喜之先生の翁の千歳役させていただきました。
あれからあっという間に30年経ったのだなと、しみじみ思います。

その後何度か千歳の役はさせていただくことになるのですが、平成五年に三度目の千歳の時、今度の鼓の頭取を勤め下さる鵜沢洋太郎さんが、その時の脇鼓で、頭取が人間国宝の鵜沢寿先生、もう一人の脇鼓が私の鼓の師匠でした鵜沢速雄先生でした。
鵜沢家三代の鼓で、その時お勤めいただいたのが印象深いです。

初めての千歳の時は、当時住み込み修行中でしたので、喜之先生に何度も稽古をつけていただき、また鵜沢先生が初役を心配してくださって、鼓の稽古の後に当時稽古場にされていた鐵仙会の稽古場で稽古をつけていただいたのが忘れられない思い出です。

速雄先生は恐ろしい程の裂帛の気合いで、間違えたら生きて帰れないような気がして、必死に叫んで舞っていたように記憶しています。
それを、たまたま事務所におられた先代の観世銕之丞先生が、おっ、何かやってるなと覗きに来られて、何も仰らずに、見て見ぬ振りをして微笑んで去られたのも懐かしい思い出です。
(その当時、父は鐡仙会の定期公演に伺っていたので、公演でご一緒させていただくことも多かったので今よりも交流がありました。)


当時を思い出すと、若い頃は口から心臓が出るような思いを何度もしましたが、今になれば良い勉強をさせていただいたなと思います。

あの頃の師匠方の年齢を自分が既に越したのだと思うと、己の未熟さに恥じ入るばかりですが、精一杯勤めを果たしたく思います。

数日前、洋太郎師に来ていただき、翁の稽古をさせて頂きましたが、30年前の緊張が蘇るような思いがしました。やはりこの曲は特別の中の特別なのだなと思った次第です。
無事に新春の舞台に出演し勤められる事を祈るばかりです。

どうぞよろしくお願い致します。

久しぶりの投稿で、長文になり失礼しました。

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