能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

舞台後記

御礼九月九皐会

昨日は九皐会ご来場ありがとうございました。
兄の野宮のシテの地頭をさせていただきました。
野宮は本当に名曲で、素敵な曲なのですが、二時間近くかかる演目なので、時節柄残念ながら感染症対策により時間短縮による演出変更がありました。
このところ地謡も4人地です。
客席も半分以下です。
これによってお客様には安心してご覧いただけたとも言えるので、昨日の段階ではこれが精一杯でした。

名曲といえど三番目物は長くて嫌というお客様もおられるので、あれで充分、もっと短い方がよいと言われるより、あの部分をもっと観たかった聴きたかった、もっと長い方が良いと言われる方が嬉しいのですが、昨日はいかがでしたでしょうか。


地謡としては、クセの詞章を省き、シテは、一部詞章や序の舞を少し詰めたので、バランス的には破の舞の比重が増えたかもしれません。これによって後半場面で六条の心乱れる内面性が、いつもより少し際立ったかどうか。そう観えたらよかったのですが。

野宮は同門だけでなく他家の名人の先生方と地謡をご一緒した時の耳に残る音の記憶が多い曲で、あんな風に謡えたらなと思っていた曲です。
場面場面、一行一行に微妙な息遣いや変化があり、瞬間瞬間のシテや囃子との感じ合うやり取り多い曲です。
またとにかく息の濃い演目なので、我知らず謡い手の内面的なものも滲むような感じがします。
終われば例により反省ばかりですが、また謡いたくなる濃厚な演目です。
次回こそは平穏な世の中でじっくり二時間超えで謡う機会があればと思います。

日付変わり本日は朝から別の舞台の撮影がありましたが、終わってみると、昨日息を絞り出して謡っていましたので全身の筋肉疲労。ロングブレスに近い感覚といえばわかるかな。毎日謡ったらきっと痩せられますね。

二十代の頃、父と三番目物の謡いの稽古をすると、無音で発声して息を吐きつづけるような、まさにロングブレスで息を鍛える稽古をよくさせられました。父は寿夫先生に能の稽古を受けていたので、その影響でひたすら息の稽古。その頃は何をやっているのか意味不明でしたけど、今は理解できます。声を乗せる基礎の身体作りだったわけです。

思い出話をもう一つ。
昔新潟長岡で父が能の会を毎年やっていたころ、先代の観世銕之丞先生がご出演くださり、その頃は父も毎月銕仙会に出演していたので交流があり野宮をお勤めいただきました。私はその時は駆け出しで地謡についてないので、客席で音の具合を見てこいと言われて、客席でシテの出を拝見していました。
すると例により美しく女が現れて謡出だすのですが、先生は独特のしわがれ声なのです。いわゆる美声という朗々とした声とは違うお声でした。
ところが何故かそれが美しい女の声に聞こえて来る。あれれ。おかしいぞ。しわがれ声なのにと、聴き直すと確かにしわがれ声なのに、どうしてもすぐに美しい女の声に聞こえて来るのです。狐に摘まれたような感じで目を見張りました。そこには確かに見たこともない美しい女がいて、その息遣いや能役者の身体がそう見せる。いやいやそんなはずわないおかしいぞと思う刹那、やっぱり可愛らしい女になる。なんなんだコレはと目を見開きました。これが芸なのか!と若い私には衝撃的な舞台でした。
後でその謎を解明そようと父から記録映像を借りて何度も見ましたが、当時の解像度の遠くからの記録映像では秘密は分からず。生で感じたあれは一体なんだったのだろうかと。父に聞けば、名人の芸、名人の息遣いとはそういうものだと答えるばかりでした。
深く記憶に残った舞台でした。

さて九皐会では、来月の10月公演の自然居士のシテと11月1日に公演が決まりました新演出能 聖剣伝説2という、タイトルだけでも楽しそうな舞台が続きます。
そのほか、再開してきた舞台が目白押しで、準備に追われる毎日になってきました。
しかし、コロナだけでなくインフルエンザも来そうなのでまだまだ油断せず、日々慎重に勤めて参りたく存じます。

皆様もどうぞお元気で。






九皐会定期公演再開

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昨日は、二月以来、実に5ヶ月ぶりの九皐会定例会の再開でした。
ご来場賜りましたお客様には、心より御礼申し上げます。
誠にありがとうございました、

コロナ禍の感染症対策で臨んだ今までとは違う公演。様々な対策を議論し施しながら演者もスタッフも、今までとは違う行動や様式。昨日も、客席は100席以内。
入替時は、全客席をアルコールで拭き直し、お客様には消毒やマスクの着用を願うなのどの対策にご協力いただいての公演。

そんな中、お客様には、久しぶりの舞台を楽しみにお越しいただきました。

幕横からお客様の入る客席を見た時は嬉しかったですね。本当に。

昨日は席を空け隣にお客様のいない配置の客席で、換気休憩を入れた1公演全体で約90分程度と長くならないようにして、能一番をメインご覧いただいた舞台でした。

昨日の千手のシテは長山耕三君。
私は、この千手郢曲ノ舞の重衡を勤めました。

今年の春に父上、長山禮三郎師は他界され、申合せの後、いつもご注意をいただく大先輩のいない楽屋。
ご存命ならば、どうご注意をいただくだろうかと自問自答していました。

「よっちゃん、そこはもっとしっかり品よく謡うんだよ。」
そんなお言葉が聞こえたような気がしました。

今年は、五月に鎌倉さんで千手のシテを勤める予定がコロナ禍で中止になっていたので、昨日の舞台で少し胸のつかえが取れたような気がしました。

なんとか無事に終わり、少しホッとしました。


七月も催しはほとんど無くなりましたので、本格的な再開は八月以降かと思いますが、まずは最初の一歩を踏み出し、次へと繋げていきたいと思います。

お客様からのご意見も聞かせていただければと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

誠にありがとうございました。





御礼 鎌倉能舞台

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本日は、鎌倉能舞台さんの能を知る会で葛城のシテをさせていただきました。
ご来場誠にありがとうございました。
今日は東京や埼玉からも遥々応援に来ていただき、心強かったです。

また、とても良い面装束をお貸しいただいて、ありがたかったです。
お客様並びに関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

御礼九皐会

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日付変わって昨日は大変にお暑い中、九皐会定例会ご来場賜り誠にありがとうございました。
能は鳥追船と阿漕。
鳥追は、この曲だけの作り物の舟が特徴的。
観世喜正師親子共演の舞台でした。

阿漕は、演者がやりたくなる曲の一つで、ちょっと怖くて重たいテーマなんだけども、いろいろ工夫された演技の型の細やかな伝承が伝わっている面白い曲。
私がさせていただいたときは、後場の上演中に近所に落雷があって、物凄い音であったのを覚えています。
私がまた演りたい曲の一つで、今日は後見でしたが、シテの永島充君と、あれこれ演りようを話せて楽しかったです。

ずいぶん以前に私がした時のブログ記事がありましたので、参考までに。結構書いてますね。この時は父六郎の地頭でした。今日も充君の地頭を永島忠侈さんという親子共演でしたね。








それから今日は私は女郎花の仕舞を勤めさせていただきました。
昨日は師匠と相談しまして少しでも客席が涼やかになればと、四番の仕舞は皆色とりどりの麻の衣にて勤めました。私のは父が着ていた思い出の浅葱の衣でした。
楽屋で大先輩方がそれを覚えてくださっていて、少し思い出話しを致しました。
着物ってそういう事が出来るのでいいですよね。

このところあちこち夏の催しが続いておりますが、暑さ厳しいみぎり皆様もどうぞ水分多めにお取りになってご自愛くださいませ。
ありがとうございました。





御礼 花筐

昨日は雨の中、若竹能にご来場賜りまして誠に有難うございました。
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私がシテを勤めました花筐も無事に終わりました。
そんなに長い時間の曲ではないのですが、各段各段の積み重ねで、中身の濃い大曲でした。

昨日は、終演後社中のお弟子様方が一席設けて下さいまして三十人余りの大宴会となりました。
そこで花筐に因んで可愛らしいお花をいただきました。あまり似合わないけど(笑)一応アップしておきます。
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誠にありがとうございました。

昨日は鞍馬天狗の花見稚児役の子達がいましたので、楽屋もお雛様のような可愛い子供達で華やぎました。今の子供達って、本当にお行儀が良くて賢いので、実にスムーズに装束を着て舞台に出て行きました。
いやー本当に可愛いくて賢い。
皆立派に勤めて春の華やぎをもたらしてくれました。

花筐の子方を勤めてくれた彼は、もう今年中学生との事。小さな時から子方をしていた彼が、凛々しい少年になって立派な帝を勤めてくれました。こちらも感謝でした。

若竹能は、次回は夏。7月28日一時開演矢来能楽堂です。朝長と井筒という、大曲二番です。
中所師と佐久間師が勤めます。
私は朝長の地謡と井筒の重後見の二番を仰せつかっております。
大変内容の濃い1日になりそうですね。心して準備したいと思います。
すでにお席が埋まってきているようなので、どうぞお早めに九皐会事務所にお申し込み下さい。
宜しくお願い致します。

この度は誠にありがとうございました。

追記
渡辺カメラマンからも写真いただいてので一枚アップしますね。
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御礼 九皐会 初会 翁 

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昨日は、観世九皐会一月新春の定例公演にご来場賜りまして誠に有難うございました。

お陰様で、翁の大役を無事に勤めさせていただきました。誠にありがとうございました。

能の世界では大変に大事にしている演目で、遡れば室町時代の能楽大成の遥か以前より伝承された神事の演目です。
観世流では重習奥伝という最高位に位置する演目となっており、まさにその名の通り秘事口伝伝承で伝えられてきた特別な演目。
本来、一門の当主、長老が演じる別格の演目なのですが、観世九皐会矢来能楽堂の定例公演では、矢来能楽堂で観世喜之師匠の元に住込み内弟子修業してきた者が、生涯一度の大役として翁の披き(初演)のお役目をいただき勤めを果たすのが今までの慣例となって続いて来ておりました。
私の場合は、翁の千歳の初役を師匠にいただいてから、実に30年目。平成と共に過ごした舞台人生の節目となる今年でした。

そうしたことで九皐会の一年の最初を飾る神聖な舞台を仰せつかり、まさに一世一代生涯一度の覚悟で臨んだ舞台でした。

年明けの新春の定期公演という事で、半年間リザーブ席のお客様も多く、チケットは昨年発売初日に完売しました。
あまり宣伝する間も無く席が埋まり、また曲が曲だけにブログなどで多くを語ることも出来ず終いでしたが、ご覧いただきました皆様、応援してくださった皆様に、厚く厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

兄が一昨年に披いた時に心の準備はしておりましたが、昨年秋頃より本格的に師匠に稽古をつけていただき、お囃子方と下稽古をさせていただいたりしながら準備を進めて、暮れ頃から色々な方にお声がけいただき、またお気遣いいただいたり、ご指導を賜ったりしながら、徐々に皆様の祈りが私に集まってくるのを凄く感じておりました。

他の演目では感じたことのない、私事ではない曲の重みというのでしょうか。
物語の一役を演じるということとは違う曲の大きさと、事の重大さをヒシヒシと感じておりました。
この曲は、本人私のものにあらず公のものであるという思いを新たにしました。

とにかくも皆様の思いや祈りを、私の失態で無駄にせぬようにと思いながら稽古を重ねておりました。

前日、大粒の雪が舞い落ちて来た時には、私の慣れぬ潔斎に雪でも降ったかと、ひやりとしましたが当日は皆様の祈りが天に通じたか如く天気も収まり降水確率0%には驚きました。
滞りなく無事に済みましたのは、一重に皆様のおかげ、天の加護と、心より感謝申し上げる次第です。

ともかくも無事に済み安堵いたしました。
まさに心は万歳楽です。

昨日のシテ方の布陣は、ずっと稽古をつけてくださった師匠観世喜之先生が主後見にお座りになり、兄が副後見で面倒をみてくれまして、大先輩長山禮三郎さんが地頭、喜正若師匠が副地頭となり、楽屋内では、諸先輩にご指導いただき、後輩方にも細々とお気遣いいただき本当心強く、一門の皆様に大変お世話になりました。これもまた大変有難いことでした。
そして翁に集中出来るように年明けから稽古を控えくれた私の社中の方々にも感謝したいと思います。

ブログ上ではありますが、お客様関係者の皆様への感謝を書き記しておきたいと思います。
誠にありがとうございました。


早速に駒井カメラマンから映像が来ましたので、まずはワンカットご披露させていただきます。

追伸
渡辺カメラマンの写真もトリミングして載せますね。
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ありがとうございました。










恋の舞

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本日は鎌倉能舞台さんで、杜若を勤めさせていただきました。
恋之舞という素敵なネーミングの小書(特殊演出)でした。
特殊な笛が入り、シテは橋がかかりで水鏡の型が入ります。装束に真の太刀という白の鮫肌の柄の唐鍔に金の梨地の鞘の拵のこれまた美しい太刀を履きまして、初冠にもひと工夫、通常とはまた違う装いの洒落た出で立ちになりました。

ありがとうございました。


お暑い中ありがとうございました

九皐会若竹能終了

本日はかなり前に売り切れた人気公演で、桑田君シテの野宮と中森さんシテの葵上。
六条御息所の二つの顔を1日で観れるという事もあり、源氏物語ファンも沢山お越しだった模様。

それにしてもこの猛暑の中、ご来場いただいたお客様には、ただただ感謝のみです。誠にありがとうございました。

本日私は葵上の地頭で、本番や稽古会でも上演頻度の高い演目だけに完成度が求めらるところ。
うまく纏まりましたでしょうか。

次回九皐会若竹能は来年の春を予定してあります。
春ですが花筐を私が舞う予定です。
もう1番は鞍馬天狗の予定です。
詳細は秋頃に出ると思います。

是非またご来場下さいませ。

本日はご来場誠にありがとうございました。








新年会

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昨日は社中新年会があり、東京神楽坂矢来能楽堂にて、久しぶりに各稽古場集まっての謡い初め舞初め。
恒例の四海波発声から始まり賑やかな会となりました。
今回は風邪でお休みの方が多いとの各稽古場からの連絡が連日あり、もしや学級閉鎖ならぬ会閉鎖かと案じましたが、蓋を開けてみればご覧の通りで予定時間オーバーのご熱演で楽しい1日となりました。
終演後は新年会恒例の大宴会もあり、大いに盛り上がっての初会となりました。

関係者並びにご参加の皆様誠にありがとうございました。
また残念ながらお風邪等々でお休みの方々は、どうぞお大事になさってください。

これで社中の皆さんは、いよいよ今年最大のイベント、20周年国立能楽堂大会に向けて本格始動です。
きっとたくさん稽古して、素晴らしい舞台を勤められることでしょう。乞うご期待。



女郎花 純愛

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先日の公演の後日談になるが、
稽古場で、女郎花の観能の感想を伺っていたら、
社中の女性の一人に、あれは純愛ラブロマンスではないかとの感想をいただいた。

能では、男が留守の間に訪ねてきた都の女性が、男が心変わりをしたと誤解して命を絶ち、男も後に続く話になっているが、若い純情純真な男女にありがちな、すれ違いによる悲劇で、女性は都の少し身分のある純な女。男もひどく誠実な男性で、それゆえに後を追ったと。そのように見えたとの事だった。

純愛ねえ。。。と、私が珍しげに呟くと、
「先生も若い時はきっとそうだったと思うのです。若い頃は、ちょっとしたすれ違いや誤解で、傷ついたり喜んだり思いつめたりといった恋愛をしていた頃があったと思うのですよね」

そう云われて、思わず遠い目をしてしまった(笑)。
昔の記憶を探してみると、確かに自分にもそんな年頃があって、しかし、年とともにいつの間にか分別もついてしまうものだ。

しかし。
あの頃の自分であれば、女郎花の男女のような結末があっても、おかしくはないかもしれない。

と、いささか錆び付いた自分を自覚させられて凹んだが、そうやって観ると、この凄まじくもある話が若々しい男女の美しい浪漫のある話にも見えてくる。


実を言えば、私自身は、この曲を演じる際に、死してなお離れぬ執心の凄まじさに、人間の男女の業や欲望に触れた気がして、救われない気分になっていた。
能で演じると、それがいくぶん和らぎ、女郎花の可憐な黄色の花が咲くが、その花の咲く土中に深い闇を見ていた。

なので、この感想を聞いて少し気分が晴れやかになる思いだった。

人は、見たい景色を観る。

社中の女性が見た景色は美しかった。

そして、私が見た闇は、もしかしたら自分自身の闇であったかと、いささか愕然としながら、舞台を振り返った。(了)

女郎花編は、これにて完結。
 ありがとうございました。







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