能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

舞台こぼれ話

雑誌観世五.六月号

ご案内が遅くなりましたが、雑誌観世の5.6月号の巻頭写真に、流儀の諸先生に混じって、九皐会からは今年春の弘田さんの大原御幸と、昨年の鈴木君の清経恋之音取の写真が掲載されました。
どちらも大曲で、私も地頭をさせていただき印象深く嬉しいです。
また、私の玄象の写真も掲載していただき誠に光栄です。

今月号は催し情報ほか、林望先生の連載や白楽天の特集記事、「能に描かれる愛のかたち」と題した新連載など、為になる記事満載ですので、是非ご購読下さい。
次回号は七月一日に、特集記事「江口の仏教観」ほかで、檜書店さんから発行されます。


つい二日前、はじめての矢来能楽堂「土蜘蛛」(シテ鈴木啓吾)も満員御礼の大盛況で終演し、再開して来た催しも少しづつ活気づいて来ました。
はじめて能をご覧になる方が、大勢足を運んで下さり嬉しかったです。この日は私は地謡で出演でした。
フォトセッションの模様が矢来能楽堂のTwitterに上がっています。
九皐会はTwitterに情報が上がるのでチェックしてみて下さい。私も自分のTwitterで時々呟いてます。フォローしてみ下さい。

夏の所沢ミューズの催し「触れてみよう能楽の世界」もお席が残り少なくなったと売れ行き好調のご連絡をいただきました。
嬉しい限りです。

催しが増えて来たので、しっかり準備して臨みたいと思います。
宜しくお願い申し上げます。


来月の五月九皐会定例会では、仕舞を舞います。

本日は四月九皐会で、能 須磨源氏と采女を中心とした2公演でした。シテは桑田君と坂君。
九皐会もコロナ禍で始まった2公演制がすっかり定着してまいりましたね。
徐々にお客様も増えてきている感じがいたしました。

私は今日は須磨源氏の方の公演に地謡で出演。
采女は楽屋で働いておりました。

采女は長い演目で2公演目が終わると夕方6時。
見応えがあったのではないかと思います。
久しぶりにガッチリした公演でした。
ご来場ありがとうございました。

さて、今月は九皐会特別公演もありますが、そこは売れ行き好調なので、五月定例公演の宣伝をば。


来月の五月公演の第一部の仕舞の部で、私は海士の玉ノ段(アマという海に潜る職業の女性が主人公の演目で、藤原不比等の子を妊った海女が、海中の竜宮に取られた宝玉を奪還するのと引き換えに、自分の子を世継ぎにしてくれる事を約束する。そして海人は竜宮のある海へと飛び込み、我が身と引き換えに遂に宝玉を奪還する。その場面を舞語る仕舞)を勤めます。

今年はお正月に休演してしまったので、九皐会で舞うのはこれが初めてになりますか。

お仕舞を稽古してる上級者にはお馴染みの演目ですが、面向不背の玉(めんこうふはいの玉)奪還のくだりの謡いと舞は、能 海士の見どころの一つになっています。

第一部は仕舞三番と能 杜若 シテ 中所宜夫
です。

杜若は伊勢物語を題材にした人気曲で、杜若の咲く時期に良く上演されます。
八月の所沢ミューズ 触れてみよう能の世界でも、真夏ですが上演しますので、またいずれ詳しく解説いたしますね。今回は先輩の舞台をじっくりと勉強したいと思います。

五月定例会の第ニ部は、先日、事件がありました那須の殺生石を題材とした能 殺生石 シテ 長山耕三。

観光名所として名高い那須の殺生石が、能のように本当に石が割れたそうです。
九尾の狐が現れたのではないかと話題になりました。

今回は白頭という白い毛の狐の演出です。
私も地謡に入ります。タイムリーな演目で、こちらも楽しみです。


さて、一部を見るか二部を見るか。
迷った方は、是非両方ご覧下さいませ。
お待ち申し上げております。

宜しくお願い申し上げます。

※九皐会ホームページ及び、チラシに誤表記がありまして、仕舞玉ノ段は兄和久の名前になっているものがありますが、今回は私が舞う予定です。
おわび方々宜しくお願い申し上げます。

本日は九皐会若竹能春の公演でした

ご来場ありがとうございました。

今日は、私は東方朔という、わりと上演頻度の少ない作品の地頭でした。
中国物の演目で、西王母の園に三千年に一度桃の花が咲き実が成る桃の木があり、そのめでたい桃を漢の武帝に持ってくるという後半華やかな筋立て。
シテの九千歳の東方朔は中森貫太さんで、神仙西王母がツレで兄、和久が勤めました、
今回、桃の節句も近く、大蔵流の間狂言は頭が桃の桃の精が登場し、寿命が延びるめでたい桃だと、他の三人の仙人達にねぶられてしまうという楽しい間狂言。ねぶるというセリフが出てきましたが、がじる?しゃぶる?桃を食べる時のアレです。
間狂言って、
真面目に聞いていると、思わず吹き出してしまうような面白い時があって、今日も楽しい間狂言に舞台が和みました。

後半は東方朔と西王母という二大仙人が相舞をして、、帝王の寿命長久を寿いでめでたく終わります。

上演頻度が少ないと言いながらも、半年の間に二度も謡わせていただき、それもまた珍しいねと話していた今日でした。

もう一番は、項羽という、これまた中国物でした。
シテは桑田君で、後ツレは、現在修行中の金子君が、面をかけての初めての大役。まだ10代ですからね。これからが楽しみです。

さて、三月九皐会は大原御幸の地頭を勤めさせていただきます。
シテの建礼門院は弘田裕一さんです。
そこに後白河院(駒瀬さん)が御幸して来るという話。
いま大河ドラマでやっている鎌倉殿の物語が突入する源平の戦いの後日談の物語。
壇ノ浦の戦いを、心ならずも生き残った建礼門院は、この世の天国と地獄を体験し、今は尼となって静かに暮らしているのですが、そこに後白河院が訪れて、過去の回想を物語る事になるのです。
これはもう言わずと知れた大曲ですので、心して勤めたいと思います。
謡曲を稽古している方は、いつかはこれを謡いたいと思われるのではと思います。最高難度ですよね。
情感溢れる詞章と美しい節回し。
そしてまた、戦の回想では激しい場面もあり、楽曲として大変素晴らしい作品と思います。
是非聴きに来てください。


もう一番は、兄、和久が忠度を勤めます。
修羅物の名曲ですね。
この曲は、他の修羅物とは一味違い、修羅の苦悩は描かれず、歌詠みとしての忠度の苦悩が描かれています。
曲中に花という言葉が散りばめられていて、花こそ主(あるじ).なりけれ。と終わる世阿弥作の傑作です。
花とは何?と考えさせられる作品でもあります。

是非ご来場下さいませ。

昨日は九皐会でした

昨日は九皐会でした。
喜正師の白髭の後見を勤めました。
先月お休みしちゃったので、昨日は舞台に入る時ちょっと緊張しました。いくつになっても緊張するもんですね(笑)

白髭は登場キャラクターが多いのですが、前半は居クセでクセ謡の中でシテが舞わず、シテは舞台中央に座ったまま、壮大な昔物語を地謡が聴かせる演出なわけですが、肝心の謡いの言葉がわからないとちょっと難解に感じたかも。面白い昔話なんですが。。

作り物や登場する人が多いので、装束付けや大道具など、人手がないと出来ない演目です。
劇的で心理描写があれこれあるという曲ではなく、神姿の威厳を感じせる曲で、大がかりで人手や手間がかかるということで、上演頻度が少ない演目かと思います。
そういう意味では、九皐会だからやれる演目で、貴重な機会でした。
囃子の演奏がとにかく多いので、お囃子好きには最高だっかと思います。

中入りは舞台上の作り物の中でのシテが後半の姿に装束着替えですが、これは後見の役目で、間狂言がひくまでに終わらなければならないわけですが、こちらは時間との勝負ですが、昨日は時間に余裕がありましたので、スムーズに行けました。

この辺りの事は、お客様には見えない裏の部分なのですが、舞台上の作り物の中で客席から見えないように変身をするわけです。

で、後半作り物の宮の幕が落ちると、ジャーン!と、奇術のマジックショーのように見事に別人に変身して登場するわけです。
昔の人が考えた変身の演出ですが、昔の観客も、さぞ変身に驚いた事でしょう。

昨日は、悪尉という威厳のある面に鳥兜を頭に被る出立ちで尚更迫力がありましたね。

ともかくも若いツレの子達も健闘し、無事にいって何よりでした。

今月末は、九皐会では若竹能があり、桑田君と中森貫太さんがシテを勤めます。
私は中森貫太さんの東方朔という曲の地頭を勤めます。
上演稀な曲の一つなので、是非ご来場下さいませ。
その日は、項羽という演目と2番の能です。
チケットは、矢来能楽堂、観世九皐会事務所にお問合せ下さいませ。
どうぞ宜しくお願いします。












11月公演 玄象の予告画像 九皐会Twitter

来週にと迫りました11月定期公演の玄象の予告画像が九皐会Twitterに上がりました。
ご覧下さい。→九皐会Twitter

2003年に兄和久がシテを務めております。
へーそんなに経つのかと。光陰矢の如しです。
この時は私がツレの梨壺の女御を勤めております。

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さてこれは、前場の汐汲みの尉が担ぐ桶の小道具。
桐で出来てるようでとても軽いです。
最初、肩に担いで登場します。
ちょっとした紐の長さや縛り方にも工夫があります。
意外と扱いのが難しいのが桶です。

融と同じように汐汲みの型があります。
その風情に海辺の景色が感じられたらいいです。


玄象の公演解説は以前のブログをご覧下さい。
リンク貼り付けておきます。
玄象解説総集編


Twitter見てください。11月1日竹生島の秘宝

お弟子さんとリモートで稽古していたら、Twitterを見たことないとの、衝撃発言。
最近の九皐会や私の最新公演情報は、ほとんどTwitterなのに。
いや、意外とそういう方多いのかも。
事務所スタッフから動画Twitterお願いしますと言われ、毎日頑張ってしております。
言われなかったら私も見てないかも(笑)。
是非ご覧くださりませ。
下記のリンク三件他、沢山上がっております。
チェックしてくださいね!


https://twitter.com/endoyoshihisa/status/1319833161895866368?s=21



虫干し

昔は8月は催しが少なく、この時期に片付けや整理の時間に当てていました。
これは夏は装束に汗が移るからですが、昨今は、冷暖房もありますし、夏のイベントも増えて忙しくなりました。
しかし、今年は催しが少ないので、ちょうど良い感じで先週九皐会の虫干しに手伝いに参りました。

夏は、どこの家も虫干しと点検をやるのが恒例行事で、これは今もなさっているところは多いと思います。
九皐会は、今年別館スペースが出来ましたので、恒例の虫干しと点検を先週しまして、無事に済みました。

私の若い頃は、内弟子さん中心に数名で1週間かけてやっていましたが、今は装束小道具も数千点に増えましたので、皆代わる代わる手伝いに行っております。
かれこれ私もはや手伝って35年以上になりますが、ようやく少し、装束の良し悪しや、面や道具の良し悪しも違いを肌で感じるようになりました。
後見で人につけても、自分が着ても、一瞬の感触でわかりますね。良いものは、いいねコレと。

昔の絹装束や小道具は、とにかく仕事が丁寧で、これを今再現するのはとても難しいと感じます。
仕事への意地とか情熱みたいなものを凄く感じます。
材料も違います。そして技術やセンスや知恵が素晴らしい。

昔の仕事は、コストとかではなくて、無心に手間暇かけて作っていた感じがするのですね。
それでも食べていけたと言われれば、それまでなんですが、綺麗なものを作りたい、いい仕事がしたいという物作りのこだわりを感じます。
今は職人も減り、材料も手に入りにくい時代になりました。

100年200年と経年したものは、生地も部品も擦り切れて痛ましいのですが、それでも今はもう手に入らない糸であり染料彩色であり、材料であり、細やかな仕事が唯一無二の希少な価値を感じさせます。

戦争地震大火のあったこの日本で、よくぞ守られていたなと、その度に避難をさせた先人の苦労を改めて思い敬服いたします。
こうしたものを身につけて舞台に立てるというのは本当にありがたい事だと思います。

こんな事をつぶやくと、年取ってきましたねと、後輩に突っ込まれますが、しみじみとそんな事をお盆の時期に感じました。

亡くなった先輩達から寄贈された装束や、何十年も前に先輩方が手をかけて作った小道具とか、タトウ紙に書かれた文字とか、その紙の修繕具合とか、装束を繕った跡とか、先輩方のその時の感じや思いが今も息づいています。それを畳みながら、先輩方の思い出話をしたりするのも恒例の事です。

理屈とか合理性とかとも違う、こうした感覚を、時代が変わっても新しく入ってきた若い方にも想像して感じてくれるといいなあと思います。
少なくとも我々の世界には、言葉に出来ない、あえてしない感覚的な事は、とても大事だろうと思います。

私は例年、虫干しは埃除けに頭にタオルや帽子、メガネ、マスクや覆面という大掃除スタイルなので、今年は特に、対策的にもふさわしい装備でした。
また、装束を扱う時は、油や汚れがつかないように頻繁に手をよく洗うので、それも時節柄よかったです。
また舞台や楽屋など敷地全部を広々と使って黙々と各個に作業するので、終わってみれば、いつも通りで事済みました。

さて、今週末はミューズの触れてみよう能の世界です。チケットはお陰様で完売しております。

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無事に行きますように。
どうぞよろしくお願いします。





立て膝の話 

NHK大河ドラマの麒麟がくるの能楽シーンに、同門の坂君が出ているというので最近楽しみに観ています。
で、このドラマ、女性が座る時、立て膝をする演出なのでオヤと思いました。
なぜなら、室町時代より伝統を受け継ぐ能の世界に出てくる女性の座り方は、舞台上、この立て膝が一般的だからです。
能の世界ではごく普通の事ですが、あまりテレビでは見かけないので、ほーっ珍しいなと感心。
この立て膝は、折敷なんて言い方もします。


能に登場する役の座り方は、この片膝か、安座(あんざ)
安座というのは、現代のあぐらに少し形が似ていますが、お尻は床ではなく足の上に乗せます。

正座というのは、能の役の演技では、あまりないかな。極稀に膝を崩す型の時くらいでしょうか。

狂言の方ではありますね。

地謡方や後見、また床几から降りた囃子方は正座です。


また、この立て膝の座り方は、男性の役でも通常は立て膝です。
稀に安座になります。

今回のドラマ、当時の時代考証でそうしたとの記事を見ましたが、この座り方、実は15分も座ってると、とてもキツい。
姿勢を保つのも、足に体重がのるのも、結構筋肉に負担がかかります。
また、右足の甲に体重が乗るので人により豆やタコ出来たりします。
また、この立て膝にも、どっかりと座ったり、腰を浮かし気味に座ったりと、人により役により、やり方があります。

テレビを観ていると、女優さんが、長時間の撮影でそれなりに苦しいと思うけど、本番のシーンで、スッと立たれるので、さすがだなと思いました。
一年もやっていたら、能舞台でも格好良く座れるようになると思います。

家で試しにやってみるとわかるけど、姿よく30分座るのは大変。
特に女性の役は、膝を大きく割らずに座るので、筋力も必要です。
で、足が長い人の方が大変かも。
今の若い現代人向きとは言い難いです。

能では、ワキの役者さんが、この座り方が普通で、1時間以上座って、スッと立ったりすると、心の中で拍手です。
それ位キツい。装束の重さもありますから、かなりの負荷です。
ワキの役者さんは、片膝座りのプロなので、普通の正座の方が痺れるという人もいますね。

若い頃は、シテ(主役)のツレの役で、大曲になると1時間以上、じっと座って動かない役も多く。足や腰、背中の筋肉がバンバンに張って、また痺れた足でスッと立って帰るのが大変だったのを思い出します。
痺れてよろけようものなら、大恥なので、もうその瞬間は、気合(笑)

観る機会があったら、是非ご覧ください。

能楽は、はるか昔のこのドラマの時代以前から行われていて、今に受け継がれています。
その火を絶やさないようにしたいですね。

チラシfly2web

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本年5月24日(日曜日)に、神楽坂矢来能楽堂にて、第九回遠藤喜久の会を

「源氏物語 生け花のある能 半蔀 立花供養(はじとみりっかくよう)」と題して

催させていただきます。


公演は、まだ少し先ですが、どうぞご予定下さいませ。

本年は、亡き父、六郎の七回忌にあたり、また、母の一周忌と重なりましたので、
~亡き父母に捧ぐ~と、チラシにも入れさせていただきました。
他向けの舞台になればと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。



*コロナウイルス等の国内事情により、変更が生じる場合は、

このブログ・ホームページにて、ご案内いたします。




チケットのお申込みは、

矢来能楽堂観世九皐会事務所 3月16日11時~

03‐3268‐7311(土日祝日休み 留守電有 夕方5時迄)

又は

矢来能楽堂ホームページサイトより申込

矢来チケット クリックjump!



又は

カンフェティチケットセンターより購入 3月16日11時~

Confetti[カンフェティ]

Confetti(カンフェティ)・・・お得な公演チケットサイト

WEB予約 http://confetti-web.com/ 電話予約 カンフェティチケットセンター 0120-240-540(受付時間 平日10:00~18:00)
≪WEB予約の注意事項≫

・ご予約前に、お得な公演チケットサイト「カンフェティ」への会員登録(無料)が必要となります。

・セブン-イレブンへの発券手数料がかかります。

≪電話予約の注意事項≫

・払込票番号を予約時にお伝えしますのでメモをご用意ください。

・お電話でのご予約の場合、会員登録は不要です。※カンフェティポイントは付きません。

・予約有効期間内に、払込票番号をお近くのセブン-イレブンのレジまでお持ちください。



今回、父の七回忌が5月でして、また、母の一周忌でもありまして、父母への手向けの気持ちで、半蔀・立花供養という特別な曲を、源氏物語を題材した作品の仕舞と合わせて企画公演の形で上演させていただきます。
華道家の横井先生とご一緒するのも、本当に久しぶり。15年ぶりかな。
その時は、劇中能という当時新しいスタイルの劇場公演で、大竹を50本以上使った壮大な花のオブジェの舞台美術に作ってくださった。父がこの時、玄宗皇帝役でご一緒しているのです。
「美しき夏の夜の幻」というタイトルでした。
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その時に、横井先生が、いつか立花を生けたいとリクエストされて。
いやいやそんな特別な曲、父なら出来るかもしれませんが、私にはとても無理ですよと。
何十年もかかりますよと。
それが今回、こんな形で実現するとは。

この公演で、全編をストリーテラーの役で共演していただいたのが、今回ご出演予定の善竹十郎先生。
いろんなご縁と教えをいただいた公演でした。またご一緒出来て嬉しいです。





現実逃避の力

事務仕事が山積みになったり、本番が近づいて緊張して来ると、私の場合、決まって小道具をいじり出す。
舞台に使う物を作ってみたり、修理を始めるのだ。

そのお陰で極く稀に傑作が生まれる時もある。
先日アップした数珠は、もともと漂白された白房だったが、それを生成りの白と浅黄に染めた。

しかし、稽古をしながら姿見を見ると何となくしっくり来ない。
少し優しい色なのだ。

盛久ならば茶か紺か、はたまた紫か?
盛久の信仰心と覚悟と立場をそこに少し出せないものか。

しかしこの先の他の曲で使うこともあるし、当日の装束との取り合わせもあるので、どうしたものかと思っていたが、やはりもう少し濃い色が盛久には良いだろうと、現実逃避の始まりで色染めに再トライ。

自分の持物なので、こだわり出すと結構しつこい。
ちなみに正絹の房は、水につけてはいけないと房を買った時の注意書きが入っていたので、真似しないでね。

さて一発勝負。。
おお。なんかいい色に染まってしまった。。


気を良くして、稽古に使っいた派手な欝金地の経巻の裏地緞子もバラして染める。
おお。
これ本番用に行けるのかも。
経巻は本来紙巻だから、掛け軸のように裏地は地味な物なのだが、この曲の舞台用となると経巻を読む場面が見せ場となる。自然観客はその裏地を眺めることになる。そういうものだといわれればそれまでだが、霊験あらたかな観音経が何より大事なので、その経巻にも、もう一工夫あっても良いのではと思っていた。

数珠も、盛久の信仰心を象徴する持ち物で、装束念珠という、古い様式のものを、舞台用に待ち手を使い易くして使っている。これも演者により様々だ。

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というわけで、今回は染色マスターに。

もとの黄色の緞子に紺を掛け合わせるとご覧の通り織部色に。それに細工して総裏の巻物の完成。
これに金泥で観音経を書きつければ、まさに本物の観音経経巻なわけだが、それは実際には書かない。
能に使う、文や書は基本無地のものを使う。
なので私だけが読めるように心に念写する。
稽古用にしては上手く出来たので、本番でも使うかもしれない。

それにしても、この現実逃避の集中力をもっと社会の為に役立てれば、少しは人様のお役に立てるのではないと思う時がある。が、なかなかそう都合よく発動しない。

まだ本番まで日があるので、結局どんな小道具や、装束を使うことになるのか。それも楽しみ。乞うご期待。

さあ道草し過ぎた。稽古稽古。汗。

このところ何処に行っても風邪とウイルスの猛威が気になるこの頃です。
病院に行くのさえ心配なこの頃。
咳一つで人が振り向くので、空咳も出来ない。

観世音菩薩様の念波観音力で、ウイルス退散を願うばかり。

観音様のお力を書き示したこの経文。

観世音菩薩普門品第二十五

是非ネットで翻訳をご検索下さい。
頼もしいですよ。
またYouTubeには、実際にお坊様が読経していたり、音楽になっていたり、身近に親しめる時代になりました。
ご参考までに。

三月のこの公演。まだチケットあるようです。
是非矢来能楽堂へお越し下さい。
この曲、能面をかけずに素顔で演じるので、それも一つの見どころかも。ちょっと現代劇のような感じに物語が進行します。

詳しくは観世九皐会ホームページへ。→九皐会


盛久 念珠

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さて三月の定期公演での盛久に向けて、少しづつ緊張感が出て来ました。
頼んであった新しい数珠が出来上がって来たので、それに少し手を加えました。
まあ、本来数珠の玉数は、108とか、色々細かく決まっているわけですが、これは舞台用に多少略式にして色々使い易くしてあります。
玉を大きくすると108個では、二連にして持つ能の持ち方では、大きすぎるのですね。かと言って小さい玉だと女性的な感じになりますし、今回は少し大きめな玉で作りました。
房の色は、こちらの要望の色がなかなか手に入らないので生成りの白と、薄緑に染めました。
もう少し薄く染めたかったのだけど、発色が良すぎました。ま、房だけ変えることは出来るので、使ってみて様子を見ます、

結構演者の皆さんは、数珠持ちが多くて、マイ数珠を持ってる人多いです。
数珠マニア?
気にする人は、こういう仏具は色々あるので、稽古もあるし自分のがいいわけです。
うちにも祖父や父の使ったものや、私の作ったものなど、いくつかありますが、今回の少し大きい仕立てのは初めて。
今年は、10月公演の自然居士でも使えそう。
やはり本水晶と翡翠を使って職人さんが作ってますから、舞台用とはいえ全く本物であります。
これで観音経を唱えれば無敵。

というわけで、是非三月九皐会に実物をご覧にお出まし下さい。

何といっても、師匠喜之先生の吉野天人揃い(この記事は2020年)がメインイベントにありますので、華やかな舞台をお楽しみいただけると思います。

チケット発売中です。詳しくは観世九皐会ホームページへ。



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プロフィール

nohgakuhanabutai

観世流能楽師(能楽のシテ方 演者) 日本能楽会会員(重要無形文化財 能楽(総合認定)保持者 幼少より子方を勤め、東京神楽坂の矢来能楽堂で修行し2千以上の能楽公演・講座・コラボ舞台に出演・制作。毎月、矢来能楽堂定期公演に出演。 能楽重習曲、乱・石橋・道成寺・望月・安宅・砧・翁など披瀝。 また東京中野区・練馬区・所沢市・秋田県を中心に稽古と普及活動をしている。(公社)観世九皐会 能楽協会所属 日大芸術学部卒業 
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