能楽夜ばなし

能楽師遠藤喜久の日常と能のお話

公演情報/告知

絵馬降板のお詫び

【出演者変更とお詫び】

観世九皐会1月定例会 19日(日)

第二部「絵馬」シテ・遠藤喜久、持病の療養のため、後見が代役を勤めさせていただきます。

 

前シテ  駒瀬直也

後シテ  遠藤和久

誠に申し訳ございません。

何卒ご了解の程、お願い申し上げます。

観世九皐会


病名 S状結腸憩室炎

能 絵馬 1月9日九皐会公演 ジオラマ岩戸

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1月9日の公演解説のついでに紙粘土をいじっているうちに、すっかりジオラマにハマってしまった。

小学生の工作と変わらないけど、立体的になると、なんかとても楽しい。
時間があったら、もっと細かく作り込みたいところ。

神様はこうして人間を作ったのかもしれない。(なわけないか)


さて、今回はジオラマでなくて、能を見ていただきたいわけであります。←とても大事


神話の世界が実際に能になると、ずいぶん雰囲気が変わる。音楽や絹の装束からして煌びやかであります。
まさにそれが能であります。

そこを是非実際に能楽堂の客席で感じていただければと思います。
ご来場お待ちしております。


本日は、年明けの鎌倉芸術館公演の申合せがあり、これで私の年内の舞台関係は終わりまして、残すは社中の稽古のみ。

今年は、昨年に比べるとずいぶん忙しくなりました。
学校公演にもあちこち出張出来ましたし、地方の稽古も再開。ミューズ公演の巴をはじめ、九皐会の舞台も盛久、玄象とさせていただき、また、五月に久しぶりの遠藤喜久の会で、延期になっていた父の七回忌追善能「半蔀立花供養」も出来まして、去年よりずっと良い年になりました。

お客様やお弟子さんの顔もずいぶんと明るく元気になられたように思います。
来年はさらに良い年になるよう祈念します。
お世話になりました皆様、誠にありがとうございました。心より感謝御礼申し上げます。

新春は2日の矢来能楽堂の公演からスタートで、年明けから催しが続きます。
明年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

皆様にとって、新年も素敵に年になりますように。
どうぞ良いお年を。

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九皐会の新春の受付は1月6日からです。
一部完売ですが、二部はまだお席、桟敷、中正面余裕あります。ゆったりと見たい方は後方桟敷席(椅子)おススメです。正面席もあります。
九皐会定例会の私のシテは、この一番なので、見損なうと再来年まで見れません。
是非ともご覧下さい。宜しくお願いいたします。

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能 絵馬 解説4 神々の話 

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神々の話

1月9日の絵馬公演も近づいて来ました。

今年はお正月休みがなさそうな年の暮れです。

さて解説の続き。


この絵馬の能の後半に登場するのは、伊勢神宮の祭神にして皇室の祖先。皇祖神にして天上世界・高天原を統べる太陽神。天照大神(アマテラスオオミカミ)

そして、天の岩戸隱れに活躍する天照の天宇受売命と天手力男命。


古事記に描かれた日本神話がお話の下地になっています。


ざっくり神話のおさらい


国産みの二柱の神、イザナミノミコトとイザナギノミコト。

イザナミは最後に火の神を産んで亡くなり黄泉の国へ行きます。

その後を追ったイザナギでしたが、黄泉の国で雷を身に纏い蛆が這うイザナギの姿を見て怖くなり逃げ出し、ついに夫婦別れすることになります。


その後、黄泉の国から戻ったイザナギは、黄泉のケガレ落としの禊をして、その時に神々が沢山産まれます。


中でもイザナギの左目からアマテラスオオミカミ(天照大神)が生まれ、高天原の支配を命じます。


右目からツキヨミノ命(月読命)が生まれ夜の世界の支配を命じます。


鼻からスサノオノミコト(須佐之男命)が生まれ、海原の支配を命じます。


ところが荒ぶる神スサノオは問題を起こしてばかり。ついにイザナギに追放されてしまいます。


その後、姉の天照大神のいる高天原に来て、何度も暴れたので、ついに天照大神は天の岩戸に隠れてしまいます。


しかし、太陽神の天照大神がいなくなると世界は暗闇に閉ざされ、禍いが起こりました。


神々は困り果て、天照大神に岩戸から出て来てもらうようにどうしたらよいかと天の安の河原で話合って策を練り準備をします。


やがて天宇受売命が岩戸の前で桶の上に乗り神懸かりになって舞い狂い、衣服ははだけて神々は大笑い。

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天照は、自分がいないのに、なんでみんな盛り上がってるの?と、そっと岩戸を少しだけ開けます。

すると岩戸から光が溢れ出します。

そこにすかさず二人の神が鏡を向けて、あなたより尊い神様が現れて盛り上がってますよと囁くと、天照大神は、一体どんな神なのかしらと、さらに外を覗こうと岩戸を開きました。

そこですかさず隠れていた天手力男命が天照大神の腕を掴んで引っ張り出し、岩戸に注連縄を貼って封印しました。

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かくして世界は再び光を取り戻した。

というお話。


鏡も注連縄も今日でも神社や神棚で使いますが、神話時代より今に続いています。


能の絵馬の後半は、伊勢神宮の祭神たる天照大神が、この岩戸隠れの故事の再現し、帝の勅使が神の奇跡を目撃するという話の展開になっています。


もし皆さんが、日本の総氏神たる天照大神に出逢えたとしたら。

そして岩戸隠れを目にすることが出来たら、これはもう、大変な奇跡ですね。


後半では、天照大神、天鈿女命、天手力男命の三柱の神が登場し、まずは天照大神が、舞を舞い(中ノ舞)

そして岩戸隠れをしますと、天鈿女命が天照を誘うために(神楽)を舞い、手力男命が(神舞)を舞います。

この三つの舞を立て続けに舞うのはこの曲のみの珍しい演出です。


今回の能は、女性能楽師も出演して頑張ってくれます。

左から手力雄 天鈿女、天照、姥(神の化身)

朝稽古の後の一枚。

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私は最初に舞った後、岩戸に隠れるので、残念ながら二人の神々の舞は見れませんが、是非お客様には楽しんでいただきたいと思います。


チケットは観世九皐会まで。

二部の絵馬は、お席に余裕がしっかりありますので、良い席でご覧いただけると思います。

是非、お越し下さい。


なお九皐会事務所受付が、暮れの28日から年明け5日までお休みに入りますので、ご了承下さいませ。

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能 絵馬 見どころ聞きどころ❶ 三つの舞と囃子

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後半の解説 神々の話をする前に、ちと別の視点から見どころを紹介します。


この曲の後半は、天照大神と天鈿女命と手力男命の三人が出でくるわけですが、この三人がそれぞれ舞を舞うという大変珍しい作品構成になっています。


能楽用語としては、

アマテラスがチューのマイ(天照大神が中ノ舞)

ウズメがカグラ(天鈿女命が神楽)

タジカラオがカミマイ。(手力雄命が神舞)


中でもウズメ(天鈿女命)の舞は芸能の起源なんて言われます。

今回はウズメと同じ女性演者の新人、河井さんが勤めます。



能の前半の最後、太鼓が加わり来序ライジョという中入の退場囃子を打ちます。

この囃子のリズムに合わせるように今までと違う、とてもゆっくりしたスリ足で中入りしますが、実は神が飛び去る超高速をスローモーション的に表現しているとも言われます。


神様の化身という事で、登場の時は、大変厳かな真ノ一声(しんのいっせい)という格式ある出囃子で登場し、前半の終わりの中入は来序で退場するわけです。



そして間狂言の後、後半は全て太鼓が入った華やかなお囃子と神様達の三柱三様の舞が見どころになります。


お囃子方は、ずっと演奏しっ放しになるので、この曲はホントに大変です。

お囃子の音楽が好きな方には、たまらない曲です。


今回はまた、笛は今年の私の玄象を吹いていただいた森田流の松田先生をはじめ超手練れのお囃子方での演奏。

掛け声も凄いです。

聞きどころ見どころ満載の囃子となると思います。


生の迫力ある演奏をお楽しみください。

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能 絵馬 解説 ちょっと休憩 天之岩戸

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いや、ホントに忙しんですってば(笑)
100均の粘土をつい手にとってしまい。。。またも現実逃避。。楽しい。。。

能では作り物という自分達で作る布地の大道具が岩戸になりますが、本来岩戸は岩なわけで。こんな感じだろうと。

以前高千穂に行った時に、そこにも岩戸伝説があり、私的にはこんなイメージでした。
天上の話が、下界の現世に転写されていて、観光客以外、人なんて来なさそうな山奥の史跡に神々が集まったという伝承をとても不思議思いましたっけ。

でも、自然の岩肌や美しさが残り、逆に神々しくもあった高千穂でした。
また是非行きたい美しい所でした。
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絵馬 解説4   神々の話につづく


 
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能 絵馬 解説 その3  古今和歌集の話

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新春1月9日 東西線神楽坂 矢来能楽堂 観世九皐会公演 絵馬

解説その3。
前半の解説の続きです。
神様の化身のお爺さんとお婆さんが仲良く白馬、黒馬の絵馬を掛け新年の豊作を祈念して、めでたくなったところで、ここから地謡で歌われるパート入ります。

ここからは、"絵馬を掛ける"という言葉を“馬が駆ける"   や “絵にかける”  に結び付けた縁語の言葉の歌が謡われます。

ここは直接話の筋には関係なくて、曲を膨らます彩りのような場面です。この時、シテが少し舞った後、舞台中央に座り地謡の聴かせどこになります。

賀茂神社の祭礼の馬の駆け比べ
松に掛かる藤の花
峰に掛かる白雲

「かける」言葉の語呂合わせで、華やいだ美しい様のあれこれを歌って、曲に彩りを添えています。

この絵馬という曲は、シテの登場からして古今和歌集から引いた歌の変え言葉が使われてますけど、そこかしこに古今集の文言がセリフや歌に散りばめられています。
古今集和歌集は、ご存知、平安初期の日本初の醍醐帝による勅撰和歌集。今からざっくり1100年前。歌の数も1100首(1111とも)。

古今集の序文、紀貫之が書いたという仮名序の冒頭 
”大和歌は人の心を種として“から始まる文章から、“力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ、男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは歌なり”
も姥の台詞に引用されています。他には下記の歌の一部が。

わたつうみの 浜の真砂を数えつつ 君が千年の ありかずにせむ (読み人知らず)

八雲立つ出雲八重垣妻籠に 八重垣作る その八重垣を (スサノオのミコト)

梅の花 それとも見えず久方の 天霧る雪のなべて触れれば(柿本人麿?)

またクセ(曲)と呼ぶ詞章の始まりは、まんま古今集序文の引用で、

「僧正遍照は、歌の様は得たれども、まことすくなし。
例えば"絵にかける"女を見て、いたずらに心を動かすが如し。」
浅緑糸より”かけて“ 白露を玉にもぬける春の柳か (僧正遍照)

と、古今集の言葉で彩りながら、前半のエンディングに筋を繋げて、お爺さん達は、実は神の化身だと正体を明かし、更なる奇跡を伊勢本宮で見せようと消え失せます。

もっともポピュラーであったろう聴き慣れ読み慣れた古き和歌の言葉があちこちに出てくると、本歌から更に想像が膨らんで楽しい!と、挿入されたのかと思います。
漢詩や和歌を引くのは能の台本作りの定番ですね。

現代ではこれを聴き取れる人がどれだけいるかしら・・。でも台本を見れば、意外とわかります。

前半が終わりシテが中入(ナカイリ)し、後半との間は、間狂言(あいきょうげん)の狂言方の出番。

大晦日の追儺(ついな)の鬼に因んでなのでしょう、仙人の住む幻の蓬莱(ホウライ)から来た鬼達が、伊勢の神様に宝物を捧げに現れて、舞台は賑やか和やかな雰囲気になります。

鬼なので面を付けての登場です。
そして能の前半のあらすじを、おさらいするように語り、打出の小槌を振って帰ってゆきます。

厄除けの追儺では払われる役の鬼ですが、この能の中では、めでたさを語る鬼達です。

ちなみに節分の「鬼は外!」は追儺の鬼祓いを起源としているようです。(異説あり)


さて、次回はいよいよこの曲の一番の見どころ。
神々のお話ですね。

お楽しみに。


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なお、お席は良い席沢山あります。
翁と一緒にご覧いただけたら嬉しいです。
チケットのお問い合わせは矢来能楽堂まで。
年末年始は、職員が休みに入りますので、どうぞお早めにお申し込みください。





能 絵馬 予告 解説その2 絵馬の神事

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この写真はお借りしたものです。

もう8年位前になりますが、社中有志と能楽史跡巡り旅に出て、この絵馬の能の描かれる伊勢に参詣しました。その時の写真が出てきたので、まずは、その時の写真をお披露目。

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上の写真は伊勢の復元された斎宮跡(斎宮歴史博物館)
大変広大な立派な敷地で、館は10分の1スケールだそうだが、伊勢斎宮の権威の程がうかがい知れる。
我々は行き先々で旅の記念に謡いを謡ってきたので、その時は、野宮と絵馬の短い謡いを皆で謡った。かな。


この斎宮のすぐそばに竹神社があり、ここが能 絵馬の史跡になっています。
かつて伊勢神宮に向かう街道に絵馬堂というものがあり、そこに立春の前夜に、その年の天候の占の結果を絵馬で示す絵馬が掛けられる神事が行われいたという。

能 前半のあらすじ
絵馬の中では、帝の勅使が伊勢に向かう途中に斎宮に立ち寄り、絵馬の神事の目撃者となる。
(何者かがその年の天の相を現す絵馬を掛けるという神事。勅使は、噂に聞く神事を確かめようと、まるでサンタクロースの正体を確かめるように、夜を待っていたのでしょう)

そこに神の化身たる老夫婦(前半のシテ・ツレ)が現れ、日照りならば白い馬、雨の多い年ならば黒い馬の絵馬をかけて、民にその年の用意を促す為に絵馬をかけることを語る。

夫婦はそれぞれ自分の持つ絵馬を掛けたがるが、結局、今年は初めて、白と黒の二つ掛けて、実り豊かな雨も降らし、日も照らして、人々が安楽の恵みを受けられように祈りを込めて、二人して絵馬を掛けることにする。

「人民快楽の御恵みを かけまくもかたじけなや  国土豊かになそおよ」と新春を寿ぐ大変おめでたい謡いが謡われる。


夫婦の二人は、今までは人知れずこの神事を行ってきたが、今宵はその様を帝の勅使に見せたからには、正体を明かそうと伊勢の二柱の神の化身と名乗り、夜明けに大神宮にて会おうと、再会を予言をして消え失せる。

ここまでが前半。

帝の勅使は、神の目撃者として、この後、さらなる凄い奇跡を目の当たりにすることになります。
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さて、この伊勢二柱。
普通に考えると伊勢の二柱(神様は二人と言わず柱で数える。ふたばしら)といえば今の内宮外宮の主祭神、天照大神と豊受大神だけど、謡曲大観によれば、ここでは夫婦の日神月神として創作していると解説にあります。
月神といえば月読命。

豊受の神様は、天照大神が召喚した五穀を司る食の神様だから、豊作にも通じ、前半の筋からするとこの神様の解釈でもいいような気もしますが、後半の謡いを聞けば、やはり月読命でしょうかね。
*アメノウズメと書いている解説書もあります。

という事で、その3に続きます。
一月チケット受付中。
翁だけじゃなく、是非絵馬も観に来て下さい。
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明日は九皐会納会。瞬き位一年早かった。
今年もありがとうございました。
明日は大和舞の後見勤めます。
当日券あります。
矢来能楽堂へ是非。



能 絵馬 予告 解説その1  暦の話

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(写真はお借りしたものです)

旧暦の話

(新暦)令和四年19(日曜日)に東京新宿区神楽坂 矢来能楽堂 定期公演二部で上演する絵馬ですが、この日は、旧暦で云うと、まだ127日にあたります。


そう、明治6年に改暦した現在の新暦(太陽暦)で令和4年の1月1日は、旧暦即ち月の満ち欠けサイクルの暦では、1129日。まだ秋の終わりということになります。


なぜこの話をしたかというと、絵馬の能で、前半に登場する尉と姥、おじいさんとおばああさんが、冒頭に

「あらたまの春に心を若草の神も久しき恵みかな 霞も雲も立つ春を 去年とは言わん年の暮れ」と歌うからです。


この老夫婦、新春を前に伊勢斎宮の節分の日に絵馬をかける神事に奉仕する二人です。


太陰暦の11日は、毎年少しづつ変わります。

一年の日数計算が違うからです。


で、立春は太陽の動きから算出する二十四節気基準なので、だいたい24日頃。

で、この前の日が節分。

この日に絵馬をかける神事を行います。


ややこしいのが、立春前に旧正月11日になる年もあれば、立春でもまだ12月の年もあります。


これを年来立春と云い

立春なのにまだ去年(こぞ)(12)の年の暮れと歌ってるわけです。


絵馬のセリフとなったこの歌は、古今和歌集巻頭一番歌の「年の内に春は来にけりひととせを 去年(こぞ)とやいわむ今年とやいわむ」(在原元方)

から引いたのでしょう。

それを登場の最初の台詞謡いに持ってきたわけです。


来年令和四年の立春は24日 節分は23

そして旧暦11日は、新暦21日となります。


なので来年は立春前に旧正月が来るので新年立春ということになります。


なかなかピッタリの日に能の上演が出来ないわけですが、昔の季節感もこの謡いから感じていただけたらと思います。


新しい年の実りと安寧を祈願する絵馬の神事を前半に描く、正月に相応しいおめでたい能です。



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11月終わりは出張で秋田から出雲と東奔西走でした。
出雲割子蕎麦食べました。
食べ方知らず、慌ててネットで検索しました。
美味でした。
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絵馬の解説ボチボチ書いて参ります。お楽しみに。

一昨日の音取の舞台と新春公演「絵馬」(エマ)ご案内

一昨日は鈴木啓吾君の自主公演で、清経恋ノ音取という大曲の地頭を勤めさせていただきました。
大変特別な演目で、通常の清経には無い一子相伝と言われた笛の長大な一管が入り、シテの装束も型も変わり、それに呼応して地謡の緩急も変わります。

特別故に一門でも滅多に上演されず、その恋ノ音取の地頭をさせていただく事は、生涯にそうそうあることでは無いので、私もいつになく大変緊張しました。

先週の玄象のシテが終わってから、身体が強張ったのは、疲労よりもその緊張のせいと気が付きました。
我ながら意外とナイーブ?と思いましたが、
とにかく身体を緩めてほぐしながら稽古して過ごし、果たして当日は声も出てくれたので、地謡陣の皆々力を合わせて謡い切りました。

曲の位は当然重く、蝋燭の揺らめきから夢の境へ。
また型どころの緩急、濃淡、強弱、調子等など、実に変化に富み、いつもの清経とは別物と言っていい感じです。

ちょうど一週間前に九皐会の玄象で鈴木君とは夫婦役を勤めたばかりですし、もう35年位一緒にやってますしね。互いに呼吸は読み合えたかなと思います。

今の精一杯でしたが、終わってみれば、もう少し出来たのではないかと思ういつもの私です。

その地謡の良し悪しの程はお客様に感想をお伺いたいところです。

シテの鈴木君は、自身の会での大曲で、渾身の舞台であった事は言うまでもありません。
一ノ会のsns をご参照下さい。
お疲れ様でした。
 
ともかくも玄象と音取の二番が終わり、ホッとしています。

まだまだ秋冬公演はありまして気が抜けないですが、次は自分の一月新春公演の、これまた大曲の絵馬に向けて稽古して参ります。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

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能 絵馬 予告
東京神楽坂(東西線神楽坂駅近) 矢来能楽堂の
観世九皐会(カンゼキユウコウカイ)の
令和四年新春の1月9日(日)定期公演の第二部にて、
天照大神の岩戸隠れの神話を再現する壮大な能
「絵馬 エマ)を上演いたします。
言うまでもなく、天照大神は伊勢神宮の御祭神であり最上位に位置する神様であります。

私は前シテの尉と後シテの天照大神を演じます。

常日頃、神棚の真ん中にお祀りしてお参りしている神様を演じるというのは、芝居の能とはいえ畏れ多いといいますか、手の届かない感じがしますが、美しく清らかな姿に近づけるよう勤めたいと思います。


来年の九皐会定例会のシテはこの一番限りですので、
新春でお忙しいとは存じますが、是非観に来ていただければと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。

また追々、当blogにて解説しますね。







六条御息所夢幻動画配信

先日出演した朗読の会の飯島晶子さんの公演が、動画配信されます。

期間中2千円(学生千円)何度でも見れるようです。
飯島さんの源氏物語の朗読公演ですが、照明や音楽、声明や舞がプラスされたコラボレーションの公演になっています。

私は御息所の役で、能面装束を着けた姿で登場し、邦楽の演奏と真言宗僧侶の皆様による声明とのコラボで、葵上と野宮の二つのイメージで創作の舞を舞っています。
能舞とクレジットされてますが、能囃子による能楽の舞ではなく、今回はコラボで、声明や邦楽の笛、鼓の演奏の中に、能楽の古典的な型の舞のパフォーマンスで朗読空間に入り込んでいます。

舞台も紀尾井小ホールという邦楽ホールで、そこに照明が入り、朗読空間の中で舞う舞は、能楽堂とは違う不思議な感じでした。

飛び出す絵本的な感じとでもいいますか。
興味のある方はアクセスしてみてください。

六条御息所夢幻動画視聴

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観世流能楽師(能楽のシテ方 演者) 日本能楽会会員(重要無形文化財 能楽(総合認定)保持者 幼少より子方を勤め、東京神楽坂の矢来能楽堂で修行し2千以上の能楽公演・講座・コラボ舞台に出演・制作。毎月、矢来能楽堂定期公演に出演。 能楽重習曲、乱・石橋・道成寺・望月・安宅・砧・翁など披瀝。 また東京中野区・練馬区・所沢市・秋田県を中心に稽古と普及活動をしている。(公社)観世九皐会 能楽協会所属 日大芸術学部卒業 
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