昨夜高知公演から無事戻りました。
台風直撃コースに入り、行きはなんと一日9時間かけて大廻りして高知入りでした。
弘田師の羽衣の地謡と喜正師の安宅の後見に入りました。
安宅はやはり大曲ですね。
道具や持ち物も多く、役の人数も多く、出入りも多いので、全ての役の人が神経を使います。
矢来の家は、安宅の上演がとても多いので、私もシテ方の全部の役をひと通りささてもらったので、それなりに慣れてはいますが、それでも毎度緊張致します。
舞台は生ものなので、ほんの細かな道具の扱いや装束のこと、わずかな間合いや数ミリのズレが気になるものですし、思わぬところで影響が出るで、気をつけながら勤めます。
高知県立美術館能楽堂は大変立派な素晴らしい舞台で見応えがあります。
皆々励み、弁慶も無事に安宅の関を抜けました。

さて東京に戻り本日は、今度私が出演する朗読コラボの御息所夢幻の下申合。声明と囃子方とキャストも揃っての通し稽古。
八年位前に一度板橋の安養院という大きなお寺さん主催で上演した作品を、今回朗読家の飯島晶子さんが練り直しての上演です。
私は能の装束をつけた六条の姿。葵上の生き霊の六条と野宮の優雅な六条の姿で朗読劇に出演します。
能のお囃子ではなく、声明や朗読劇の囃子方の音楽の中に入ります。

今日は安養院さん本堂での下稽古。
私はそれほど能の型と違うことはしないのですが、真言宗の声明と舞の型はよく合います。
いや合わせてくださっているのか(笑)

そこに石山裕雅さんの笛が入ります。
もう石山さんの笛はとにかく凄くて、なんでも吹けてしまうのです。朗読の音楽も吹くので何種類も笛をお持ちになり自由自在。もちろん能管も。
今回は、せっかくなので能管を使っても能に寄せすぎない感じが出ればとご相談しました。
でも能管を使うとやはり能のようになるのですね、不思議と。全く違うと私も舞えないし。結構難題のようですが、能囃子とはまた少し違う不思議な感覚です。
石山さんは、稀なる笛の才人ですが、四百年続く武州里神楽の十代目家元の太夫です。なので舞えて囃せるスーパープレーヤーなのです。能の稽古もしてらしたので、舞の型もわかるのでそこに合わせていただく感じです。
今回は演奏のみの出演です。


そしてそこに入る声明の声で舞うのは、癖になる程心地よいのです。
まさに荘厳。
今日は特に本堂でしたから、ホンマもんのお坊様方の真言声明で、もう別世界に連れていかれる感じです。
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飯島晶子さんの源氏物語の朗読を聞かながら、あれこれ想像していると能のキャラクターが出てくる。そんな作品に仕上がってます。

紀尾井ホールは客席の入場人数制限をしての公演で、安心して静かに見れる公演です。
まだお席があるそうなので、是非、朗読と声明、そして能姿の鬼と美しい六条御息所を見に来てください。
宜しくお願い致します。IMG_0571
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