昔は8月は催しが少なく、この時期に片付けや整理の時間に当てていました。
これは夏は装束に汗が移るからですが、昨今は、冷暖房もありますし、夏のイベントも増えて忙しくなりました。
しかし、今年は催しが少ないので、ちょうど良い感じで先週九皐会の虫干しに手伝いに参りました。

夏は、どこの家も虫干しと点検をやるのが恒例行事で、これは今もなさっているところは多いと思います。
九皐会は、今年別館スペースが出来ましたので、恒例の虫干しと点検を先週しまして、無事に済みました。

私の若い頃は、内弟子さん中心に数名で1週間かけてやっていましたが、今は装束小道具も数千点に増えましたので、皆代わる代わる手伝いに行っております。
かれこれ私もはや手伝って35年以上になりますが、ようやく少し、装束の良し悪しや、面や道具の良し悪しも違いを肌で感じるようになりました。
後見で人につけても、自分が着ても、一瞬の感触でわかりますね。良いものは、いいねコレと。

昔の絹装束や小道具は、とにかく仕事が丁寧で、これを今再現するのはとても難しいと感じます。
仕事への意地とか情熱みたいなものを凄く感じます。
材料も違います。そして技術やセンスや知恵が素晴らしい。

昔の仕事は、コストとかではなくて、無心に手間暇かけて作っていた感じがするのですね。
それでも食べていけたと言われれば、それまでなんですが、綺麗なものを作りたい、いい仕事がしたいという物作りのこだわりを感じます。
今は職人も減り、材料も手に入りにくい時代になりました。

100年200年と経年したものは、生地も部品も擦り切れて痛ましいのですが、それでも今はもう手に入らない糸であり染料彩色であり、材料であり、細やかな仕事が唯一無二の希少な価値を感じさせます。

戦争地震大火のあったこの日本で、よくぞ守られていたなと、その度に避難をさせた先人の苦労を改めて思い敬服いたします。
こうしたものを身につけて舞台に立てるというのは本当にありがたい事だと思います。

こんな事をつぶやくと、年取ってきましたねと、後輩に突っ込まれますが、しみじみとそんな事をお盆の時期に感じました。

亡くなった先輩達から寄贈された装束や、何十年も前に先輩方が手をかけて作った小道具とか、タトウ紙に書かれた文字とか、その紙の修繕具合とか、装束を繕った跡とか、先輩方のその時の感じや思いが今も息づいています。それを畳みながら、先輩方の思い出話をしたりするのも恒例の事です。

理屈とか合理性とかとも違う、こうした感覚を、時代が変わっても新しく入ってきた若い方にも想像して感じてくれるといいなあと思います。
少なくとも我々の世界には、言葉に出来ない、あえてしない感覚的な事は、とても大事だろうと思います。

私は例年、虫干しは埃除けに頭にタオルや帽子、メガネ、マスクや覆面という大掃除スタイルなので、今年は特に、対策的にもふさわしい装備でした。
また、装束を扱う時は、油や汚れがつかないように頻繁に手をよく洗うので、それも時節柄よかったです。
また舞台や楽屋など敷地全部を広々と使って黙々と各個に作業するので、終わってみれば、いつも通りで事済みました。

さて、今週末はミューズの触れてみよう能の世界です。チケットはお陰様で完売しております。

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無事に行きますように。
どうぞよろしくお願いします。