喜久謡会社中会員の伊豆にある別荘で謡い勉強会の春合宿をする事になり、男性会員有志と6名でマイカー二台に分乗して、ちょっとした史跡巡りを兼ねた小旅行に出かけました。


伊豆は、何と言っても源頼朝関連の謡曲史跡が多いので、どこに行っても楽しいです。

今回の勉強会のテーマ曲は、「七騎落」と「小袖蘇我」の2曲。
ただ稽古だけでは勿体ないと、史跡巡りを織り込むことにしました。

東京から東名高速道路を抜けて小田原厚木道路から、まずは小田原の石橋山古戦場を目指します。
最高の晴天で、渋滞もなく石橋山古戦場に到着。

1180年。
頼朝は平家打倒を掲げて挙兵し、伊豆目代の山木氏を倒し戦いの狼煙を上げますが、平家軍と石橋山で対峙。
やがて戦いになり七騎落にも謡われる岡崎義実の嫡男、佐奈田与一はここで討死。
頼朝軍は大敗を喫し、湯河原、箱根へと落ち延び、やがて真鶴から千葉へと船出するのです。

石橋山古戦場駐車場のすぐ上に、与一を祀った佐奈田霊社があり、偶然にもご住職様がお迎え下さり、我々の旅の目的などを打ち解けてお話しするうちに、芸能者の方がここに来て奉納されたりしますよとのお話。ではせっかくなので我々も謡曲を奉納させていただこうということになり、七騎落の謡いを堂内ご神前にて皆で奉納。

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霊社の目の前は海。ここから房総が望める。

その後、与一の事や神仏習合のままの霊社の事など、面白いお話しをうかがって、思わぬ出会いに一同おおいに喜んだのでした。
ここは喉に霊験あらたかな霊社として知られ、声を仕事にする人もよく訪れるとの事。佐奈田飴も売っています。私も当然求めました。
ご住職には、ご親切にしてただき、誠にありがとうございました。
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それから真鶴に向かい海風の爽やかに吹き抜ける海岸道路を走って、磯料理の岩忠さんで昼食。
料理が出来るまですぐ近くの謡坂を散策。
ここは土肥実平が難を逃れて喜びの謡を歌って舞ったとの伝承史跡があります。今は車が普通に通る坂道です。
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もちろんノンアルコールです。
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簡単に済ませようと頼んだ天丼が巨大でびっくり!
このサイズは人生初。
美味しかったです。
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岩海岸の石板
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岩忠さんのすぐ下に、岩海岸があり、そこから頼朝が千葉房総へ船出したと言われています。
石版を見つけました。

すでに三時を過ぎ、スタートから奉納と史跡探訪とお食事で満腹。
一路河津の合宿地に進路を取りました。
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この日は、到着して休む間も無く謡いの稽古をみっちりして、近所の踊り子会館温泉に浸かり、夕食は海の幸に舌鼓を打ち、コトンと眠りに落ちました。

翌日は鶯の声を聞きながら遅めの朝食をいただき、今回の旅の目的のひとつであります河津神社で謡いを謡う為に、小袖蘇我の謡曲の朝練からスタート。
昨日の佐奈田霊社のご利益か、朝から皆の声が響き渡ります。
すると鶯が負けじとホー法華経と、名調子に囃してくれます。
爽やかな朝でした。

お昼になり帰り支度を済ませ近所の川津神社へ向かいます。
この八幡神社は、曽我兄弟とその父・河津三郎祐泰を祀った神社です。この地は河津三郎祐泰の館跡とのこと。
写真手前左側、お相撲の上手と言われた川津三郎が力石でトレーニングしている姿。右側は曽我兄弟。
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私の社中の謡曲史跡巡りの旅は、行く先々で関連した謡いを、その場で謡うことが多く、大抵は前日のようにどうぞ謡って下さいと言われ、「謡いは、いいですねえ!」と喜ばれます。
これも良き伝統を繋いでくださった先人のお陰です。
状況により寸法を詰めて小謡程度にすれば、せいぜい30秒から2分程度と長くもなく、近隣にご迷惑をかける事もなく充分に楽しめます。
着物を着て行くときもありますが、旅先なので洋服の時も多いです。
始めた頃は恥ずかしがっていた皆も、行く先々で喜んでいただけるので、最近は自信を持って謡います。
そしてさらに上達するという好循環です。
これも謡曲のひとつの楽しみ方ではないでしょうか。

河津神社は小さな社殿で関係者が近くにいらっしゃらないようだったので、近隣に配慮して控えめに奉納してお詣りをして旅の目的を果たしました。
蘇我兄弟の舞台は何度もさせていただいたので、お参りが叶い嬉しかったです。

お昼は地元のお蕎麦屋さんで、桜えびのお蕎麦。
これまた美味しかったです。
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帰りは、渋滞を避け伊豆スカイラインを駆け抜けて新緑を堪能して帰京しました。走行距離往復350キロ。

久しぶりのロングドライブでしたが、天気に恵まれて充実した楽しい勉強会になりました。
御同行の皆様お疲れ様でした。
合宿所をお貸しいただいたK様には、厚く御礼申し上げます。

また是非参りましょう!