今年も所沢ミューズという劇場で能楽仕舞の体験講座。
能楽ワークショップが始まりました。

このミューズワークは、ちょっと特殊で、6、7週間に渡り、能の一部分を取り出さした仕舞の練習をメインに、

能の魅力について、いろいろな角度から体験していただく講座です。

今年も申し込み者より抽選で選ばれた成人の部の方々が、午後の部と夜の部で約30名の受講生とトレーニングが始まりました。

はじめに

「この能楽アークショップは、空手のトレーニングに近いものがあります(笑)」と。説明してスタートします。

能や仕舞を実際に演じるには、まず、基本的な形。型という言うものを習得しないと始まりません。

能は、絵画のように、作り出した形を舞台に残せない無形芸術なので、

音楽と同じように演奏されたそばから消えてゆく、演じて、見られたその瞬間に消えていきます。

実際の形は残らず、そのイメージや、受けた感動や記憶が心に残るだけです。

目に見えない物語の世界のイメージをいかに自分の身体を使って伝えるか。

他の演劇と同じように身体表現芸術の難しさがそこにあります。

さらに能は、リアルな写実的な説明的な動き、パントマイムのような動きを捨てさり、

より抽象的な「型」という身体表現、身体言語をベースにしています。

その形を体に叩き込む。

ですから空手をやる人が、正拳付きを一日何千回もやるように、剣道をやる人が素振りを何万回もやるように

型を身体に覚えこませる必要があります。

これ口で言うほど簡単ではなくて、本当は身体に染み込むまで何年も何十年もかかります。

で、「型」が整ってくると、イメージと身体が自然とつながってゆきます。

例えば、

ある人が悲しくて涙を目から流して悲しい顔をしたとします。

これは他人が見ても、泣いている。悲しいんだなとわかる。

その人が泣くプロセス、状況や心情を理解できれば、共感してもらい泣きなんてこともあります。

能の場合は、泣く時にシオリという、目のそばに手のひらをあてがう型をします。

顔の表情は、面をかければ見えませんから、はじめは、何をしてるのか、奇妙な動作に見えるかもしれません。

ですが、果てしない練習を繰り返してこの型が板についてくると、泣いているように見えてきます。

さらに物語の状況を観客が理解し共感すると、実際涙を流して悲しい顔をして泣いているわけでもないのに、

悲しみが伝わり、もらい泣きをしてしまいます。涙を流さずとも悲しみのイメージが伝わったということです。

「シオリ」というのは、かなりパントマイムに近い動きなので、わかりやすく共感しやすいですが、

仕舞という舞の身体の動きは、さらに表現が日常的ではなく抽象度が上がるので、

一見してなにをしてるのかわかりません。

が、それとても修練していくと、能独特の表現として、見る人の想像力を引き出す動きになるのです。

ただ片手を上げる。ただ両手を広げる。

一見するとそんな動きですが、体の中の緊張と引き合い、呼吸、骨格や筋肉の動きを絶妙に

バランスさせてゆくと、美しい姿となってゆきます。

その「型」が、謡いと呼ばれる、台本の詞章と重なり合うと、身体が語るように見えてきます。

しかし、

美しい世界を表現するには、どうしても美しく見える、イメージできる舞を舞わねばなりません。

理屈としてはとても簡単ですが、これを自分の身体でやるとなるとなかなか大変です。

能楽ワークショップでは、そんな事をお話ししながら、初歩の初歩の型を学び、能独特の身体言語を学びます。

はじめは、立ち方、摺り足からですが、そこから、差し込み、開き、といった型を稽古してゆきます。


能を、演じる。聞く。謡う。想像する。楽しむ。観る。

そんなことを体験しながら、ワークショップ最終日には参加者の劇場発表をして、また実際に、私をはじめとした能楽師の能楽公演を、一般のお客様と一緒に鑑賞して終了するプログラムです。

この夏のプログラムは10年以上続き、のべ600名を超える方々が体験してきました。

このワークショップに参加すると、能がとても身近に感じられるようになり、今までの何倍も能が楽しめるようになります。

夏の短期集中講座なので、それも魅力です。

現在、夏休み体験の小学生の募集をしておりますが、間もなく締め切りですので、是非身近にお子様のいる方は、おすすめください。直接所沢ミューズの事業課にお電話をしていただいてもよいかと思います。

子供たちの参加を楽しみにしております。