9月28日のところざわ能特集。
なんと6夜目。
480ikkaku


あのね。所沢って来たことない方は、遠いと思うかもしれないけど、意外と近いのよ。
しかも、びっくりするぐらい環境が良いのよ航空公園駅は。所沢駅から一駅隣りで2分位?
なんてたって森と芸術の街なんですよ!

ここは皆な来ると驚く大劇場。公園に囲まれた芸術ホールが3つもあります。
今回はその中の中ホールで致します。ここにせり出しの能舞台をしつらえます。
オペラ劇場のようなホールで、国立能楽堂以上の集客容量なのですよ。
沢山の方に来ていただきたいですね。

さて、今夜の話は、あいまいなお話。
能では、曖昧ではなく。愛舞でもなく。
相舞です。

能では、通常お囃子に乗って、あるいは地謡にのって舞う時は、一人で舞うのが多い。
これが二人以上で舞うと相舞をする。というのですね。

今回の公演は、実はどれも、相舞があるのです。
乱は、双ノ舞といって、猩々2匹がそれぞれに乱れ舞う。
蝸牛も、面白い相舞のような場面が出てくる。
そして、一角仙人も、美女と仙人の相舞。


これすなわち、芸の見せどころなのであります。

能の場合は、能面をつけていますから、実際にはお互いが見えたり見えなかったしますが、同じ動きをする型もあれば、そうでない型もあり、互いの呼吸を感じつつ、お囃子の呼吸を感じつつ、物語の世界を舞うでありますね。

以前に、今回私を誘惑する美女役の佐久間君がシテの仙人をした時に、
「誘惑してあげようか?」
「お、お願いします」
という事で、私が夫人役をかって出て相舞を共演したことがありますが、彼は私の舞の袖一振りで、いちころでございました(笑)。そこが彼の舞台の面白いところ。

今度はその逆であります。
果たして彼に私こと一角仙人を籠絡する事が出来るのか、出来ぬのか。楽しみであります。

美女の舞に見とれて、、やがて舞い始める仙人ですが、その心に葛藤があるのです。

この曲の舞の面白さは、まさにそれで、龍神奪還の使命を帯びた美女に酒を勧められ、舞に魅了され戒めを破って行く男の性とその先に待つ破滅と愚かさ。それが裏側にあります。
仙人も普通の人間のように弱いところがある。
そこに役として、共感出来るところがあります。
どこか「俊寛」の頑なさに通じるところがあるようにも感じます。


しかし、その頑なさがほころびて行くところをそのまま芝居で演じないで、舞に昇華している。
これぞ能の舞の面白さでであります。
その表が、裏になり、裏が表になりと万華鏡のように、うつろいながら相舞が出来たらなあ。
この曲の見どころは、それに尽きるのではないかと思います。

キャストとしては、前回誘惑したものが誘惑され、されたものが誘惑する。
これまた表と裏。
そんな事を考えながら、臨んでおります。

それにしてもこの仙人は、人によってとらえ方は様々だとおもうのですが、
いい奴に思えて仕方がない。
そして、宿命つけられた人生を歩み、戒律的な暮らしをするも、
時折短気をおこし、つまらぬトラブルを起こす。
でも、意外に純情だったりして、憎めない。

なんか共感してしまうのですね。こういう人。案外身近にいませんか??

さて、6夜連続できたお話も、明日で第一クール終了。
お楽しみに。

公演詳細
詳しくは劇場ホームページへ。