日曜日の神楽坂矢来能楽堂の定期公演で、仕舞「松虫」のクセを舞います。
クセとは曲と書きますが、一曲の中で地謡の謡どころ聴かせどころの音曲部分で、今風にいうと音階や言葉のリズムに変化のある、いわゆる‘くせ'のある一節です。舞があればクセ舞ですし、なければシテは座ったまま地謡がメインの居グセとなります。
松虫は舞クセですね。
この曲、大阪の阿部野辺りの話で、今も駅名や塚が名残を留めています。秋の野原にリンリンと鳴く松虫。
その松虫の鳴く野原で友を亡くし、その後を追った男の物語。
男の友情をテーマにしていて、それが現代人には濃厚とも感じられるので様々解釈をされていますが、この曲舞の部分では、友と酒を酌み交わした思い出を、友を偲びつつ、中国の故事、菊慈童の菊水や、虎渓三笑のお酒の話を引き合いに出しながら謡われて行きます。
そして誰も彼も酔って全ての木々も紅葉していると舞い語ります。
しかし、ただ松虫だけが友を待って一人鳴いている。その虫の音は友を待ち偲び思う自分の心と秋の野に響き合うのです。
能になると囃子や音曲や舞いの華やかさがあって寂しい感じはあまりしないのですが、テーマには哀愁があります。
今回はお仕舞いです。


この松虫の事を考えていたら、若くして他界した幼馴染の親友の事を思い出しました。
学生時代には本当によく朝まで酒を酌み交わしたものでした。
久しぶりに友を思い出しながらお酒を静かに呑みますかね。

友を待ち詠をなして舞い奏で遊ばん