今日の所沢ミューズの能楽プレワークには定員を超える参加者が集まり盛況でした。
小学生から80代の方まで4世代に渡る参加者の方々。
ご参加ありがとうございました。
短い時間なので、簡単な能の歴史レクチャーと、能面の話などから入りまして実技は、謡や仕舞の歩き方など、まさに初めの一歩のワークショップでした。
今日のは本当に短い時間でしたが、夏から始まるワークショップでは、より深く能や仕舞の面白さを充実した時間と設備で体験していただきます。
劇場の申し込みも始まり、今日の参加者からの申し込みもあり開講が楽しみです。まだ締切まで一月ありますから、日程調整して是非ご参加下さい。➡所沢ミューズホームページ


さて、今日の講座では老松の短い仕舞に挑戦。
この曲、能楽師の子弟なら早い子で3歳、4歳でお稽古する曲。
実際の能で演じるとかなり難しく長い演目ですが、一番最後の部分の短い仕舞が、めでたく覚えやすいので初めての仕舞に教えることが多いです。皆さん初めての体験に楽しそうでした。

この曲、菅原道真公が、九州大宰府に左遷させられた時に、自邸の庭に咲く梅をみて詠んだ歌
「東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」
に喜んだ梅(紅梅)が九州の道真公のもとに飛んで行った飛び梅伝説。さらにそれを追うように老松(追い松)も道真公のもとにいったという追松伝説をもとに創作された能です。

菅原道真というと、その後、都に異変が続き、これが道真公の怨霊の仕業とされて、それを鎮める為に天満宮をを建てて神と崇めて天神と奉り鎮めたという御霊信仰が世に知られているわけですが、能の演目には雷神となった道真公が都を襲うストーリーが「雷電」という曲になっています。
今日では学問の神様として受験生によく知られているのはご存知の通りです。
先日九皐会で上演した能「杜若」の在原業平さんは、少し年上ですが同時代の人で親交があり、歌を読んだりお酒を酌み交わしたようです。どんな話をしたんでしょうねえ。やっぱり恋の話ですかねえ(笑)

「老松」の能には、天神道真様は直接登場せず、老松が主人公という、映画で云えばスピンオフムービー。いわば外伝的なお話ですが、道真公を慕った松も梅も今や草木の神霊となっていて、前半は老人の姿に化身して訪ねてきた旅人と言葉を交わし、後半は人格化した神姿で、もてなしのめでたい舞を舞うという話。

物語の最後の方で謡われるのが、日本国家「君が代」の元歌で古今集や和漢朗詠集に選べれた詠み人知らずの歌。
「我が君は 千代にやちよに さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで」
(時代が下り 我が君が君が代に転じたらしい)

の替え歌で

「これは老い木の神松の千代にやちよに さざれ石の巌となりて 苔のむすまで」
で、老松の永遠の生命力を讃えています。


君が代で検索すると昨今の政治問題や、「君が代」の歌詞がヘブライ語だという説や、日ユ同祖論など、なにかと話題に事欠かないのですが、千年以上詠われてきたこの和歌は、日本的で格調高くて好きです。
外国の国歌は、かなり勇ましい歌詞なので、やっぱり日本の歌は平和的で自然の営みすら感じさせます。

君が代に関しては色々なご意見もあるようですが、ここはひとつ平和的に一度じっくり比較して味わってみるのもよいかと思います。

能の中では、天皇親政の時代をテーマにした作品であり、「君が代」について、主語の意味合いについて、また政治利用がどうのこうのということは当然なく、永遠の平和を象徴するおめでたい歌でありました。
それでいいんじゃないかと思うのですが、駄目ですかねえ。。。

今日の仕舞いは、一番短いバージョンで、君が代は出てきません。
おめでたい言葉でめでたく終了しました。ありがとうございました。
めでたけれ。