昨日(もう一昨日ですね)は、九皐会若竹能にご来場賜りましてありがとうございました。お陰様で満員御礼でした。
平家物語をテーマにした連続公演の平家台頭の 序の巻「栄光編」と平家流転の破の巻「流転編」が終わりました。平家物語関連で37曲ほどあるということですが、その中から源平の興亡にかかわる仕舞と能で綴る今回の企画公演。
残るは、急の巻 滅亡編ですね。これは7月にシリーズ最終回とし上演します。
その時のシテは壇ノ浦で碇をかついで沈んだ知盛で、また健礼門院徳子や安徳帝も登場する演出です。
若竹能は、日頃は一般公開をしないで、玄人の研鑽の場として能楽堂で本番同様に若手の研究公演をしてきた「若竹会」の延長にある公演です。この研鑽会が100回を超えたあたりから、一般の公演として公開をし始めました。したがってその名も若竹能。まあ、結成から20年位たちましたからメンバーもそろそろ若くもないのですが、気持ちはいつまでも20歳なわけです(笑)
夏の公演では、若竹メンバーでは、まさに若手代表の佐久間君がこの大曲に挑みます。楽しみです。

今回の公演では、毎回平家に因んだ仕舞を7番づつ舞ているのですが、なんとこれだけで50分近くかかりました。
やっぱり修羅物というジャンルに属する平家の公達が主人公の演目が多いですが、なかなか一度に見る機会はないので、面白いのではないでしょうか。

夏の公演では、私は今回の舞台でで、夫婦役を演じた古川君と、二人静の仕舞を演じます。この曲は、いわば源平の終戦後の後日談ですが、静御前の霊が女にのりうつって舞うという美しくも不思議な演目です。まだ先ですが頑張って勤めます。一般のチケットは5月8日です。詳しくは九皐会のホームページをご覧ください。

さて通盛の公演後記。

この曲の船に乗る演出がとてもいいと思っています。
かがり火一つで、日の落ちる暗い海を渡っていく場面から登場する、老人と女。
まるで灯ひとつで冥界の海を渡るようだと思います。
それが終戦後の海で弔いをする僧侶のお経の声にひかれてやって来る。

通盛挿絵1


この二人が何者なのかは、前半わからないのです。ただ、一ノ谷の戦争で亡くなった通盛を追って、海に身投げした小宰相の局の事を我が事のように物語るうちに、この女も老人もドボンと海に飛び込んでいなくなってしまう。
そしてようやく、この二人は通盛夫婦の化身だとわかる。

さらに弔いを続けると、いよいよ在りし日の姿で通盛が、自らの最後を、小宰相との別れを物語るのです。
この別れの盃の場面が風情のある演出で気持ちが入りましたね。
修羅物って、実は戦いの場面は少しで、本当は恋愛ものだったり、人情ものだったりするんですよね。

戦争で亡くなった敗者の声なき声、巻き込まれた弱者の声を、舞台にもう一度登場させて、彼らの声として語らせる。そして、曲の終わりに成仏鎮魂救済するのです。

能には神々を登場させる曲や、華やかで優美な女性が舞を舞う曲もありますが、修羅物は、戦いの非情さと共に、生きることの尊さも描いているように思います。

舞台を演じる中で、以前にツレをした時は、通盛が愛おしいと思い、今回は通盛として小宰相が愛おしく思えました。不思議とそういう気持ちになるんですね。 
今回は、能楽初心者も沢山観に来て下さるだろうと、平家物語の朗読を飯島晶子さんにしていただきました。
少し下地を作ってみると、能の面白さや見方も全然違うと思うのでよかったのではないかと思います。
如何でしたでしょうか?

また感想などもコメント頂けたら嬉しいです。
まずはありがとうございました。

みちもり前ブログ用1

みちもり後ブログ用1