熊野は、随分若いうちから師匠や父、先輩方のツレを何度も勤めさせて頂きましたが、シテは初役で、終わってみれば、場面転換も多く、万華鏡のようにチラチラと変わってゆく様を長丁場の舞台で演じるむずかしさを感しました。
今回、師匠をはじめ諸先輩に沢山の教えを頂いたのですが、この曲は演者の解釈が実に色々あるのものだと思いました。
型は90分の舞台でほぼ全てひと足に至るまで決まっていますし、謡いも
台本どおりなわけで、誰がやっても同じになるはずですが、実際は全然違う。
微妙に心持が違えば、当然、間や呼吸や節の扱いや、微妙な型、声の色まで変わるわけで
、それに演者の体型や声質が10人十色にかみ合わさって、また、地謡や囃子、ワキとの組み合わせによって、まったく出来上がった感じが変わるわけですね。
この曲に限らず、そこが舞台芸の妙ということだと思いますが。
それにしても熊野。まさに「米の飯」。
演者にとっても何度も噛み締めながら勤めなければならない曲と感じ
いつか再挑戦をと心に思いました。
長時間ご覧頂きありがとうございました。
本日は紅白段桜文様鳳凰御所車唐織
金地桜文様鬘帯
花戦花見車の扇
面は若女
紅入錦の紅段でつくられた花見車
と豪華絢爛たる面・装束と三役地謡に助けられての舞台でした。
ありがとうございました。
写真は、もう一番の嵐山と、熊野の花見車。